ビットコインは中央集権化が進んでいるって聞いたけど、本当かな…?
2024年1月にアメリカで承認されたビットコイン現物ETFをきっかけに、「ビットコインは中央集権化が予想される」という論調が見られるようになりました。
現物ETFに関する情報や実際のデータを知ることで、中央集権化・分散化に関するイメージをつかみやすいかもしれません。
この記事では、ビットコインと中央集権に関する話題を分かりやすく解説するよ。
本記事のざっくりまとめ
- ビットコイン現物ETFが承認されたものの、ビットコインネットワークが国家の管理下に置かれた訳ではない
- 取引所やカストディ企業は多くのビットコインを保管しているが、個人ウォレットで保管されているビットコインも非常に多い
- 他の仮想通貨に比べ、ビットコインが特別に中央集権化が進んでいるとは言えない
【ビットコインの前提知識】分散型・中央集権型の違い
中央集権型のネットワークは、銀行や企業などの運営元が管理を行います。
一方、分散型のネットワークは多くのコンピューターが分散して管理を行う仕組みです。
世界中に散らばる1万以上のノード(コンピューター)がビットコインの取引を検証しています。
ビットコインの分散型ネットワーク
- 誰のものでもないネットワーク
→全ての参加者が共同で運営しており、一部の人や組織だけですべてをコントロールすることはできない - 誰でも参加できる
→ビットコインのネットワークは誰でも自由に参加・脱退できる - 共同で決定する
→ネットワークのルール変更には多くのノードの合意が必要。また、1つのノードが故障してもネットワーク全体は正しく動作し続ける
ビットコインは分散型ネットワークの代表例だよ。
中央集権的な運営元がいないにもかかわらず、分散して動く仕組みが構築されているんだ。
2009年にビットコインのブロックが初めて作られてから、ずっとビットコインのブロックチェーンは動き続けているんだね!
関連記事:【漫画】ビットコインの仕組みを図解で分かりやすく解説【初心者向け】
「ビットコインは中央集権化が進んでいる」という論は正しいのか
「ビットコインは中央集権化が進んでいる」という意見を聞いたけど…
米SEC(証券取引委員会)にビットコイン現物ETFが承認されたことで、「ビットコインの中央集権化が予想される」と発信するメディアがあるんだ。
え?どういうことだろう。
「ETFという形で中央集権的な金融市場にビットコインが取り込まれることが、ビットコインの中央集権化につながる」という意見のようだよ。
ETFってそういうものなの?ETFについて、少し知っておきたいな。
ビットコインETFとは
ビットコインETFとは、ビットコインの価格に連動するように設計されたETF(上場投資信託)のことです。
ビットコインへの直接投資や保管を行わず、ビットコイン市場に投資できる金融商品です。
一般的な証券取引口座で売買できるため、伝統的な証券市場に参加している多くの投資家がビットコイン市場にもアクセスできるようになります。
関連記事:ビットコインETFが日本で買える日は来るのか?いつ承認されたか・承認時の価格チャートを紹介
うーん、「ETFという形で中央集権的な金融市場にビットコインが取り込まれることが、ビットコインの中央集権化につながる」っていう意見があるみたいだけど…
その考え方だと、これまでの仮想通貨取引所も中央集権的な金融市場の気がするし、「ETFによって中央集権化が進む」っていうのは、イマイチよく分からないよ。
現物ETFの承認をきっかけに現物BTCを持った機関に対して、国家ができることっていうのは…
仮想通貨取引所に対してすでに命じたこと以外に何かあるのかな?とは思うよ。
あれ?もしかして、国家はETFのカストディ企業※や仮想通貨取引所が保管しているビットコインに対して、何か命令できる立場にあるの?
※カストディ…「保管」を意味する言葉で、ETF運用会社の代理人として仮想通貨を保管することを指す
その国の法律や状況によるけど、可能性はゼロではないよ。
国家は指定金融機関に対して何でも命令できる訳ではないけれど、カストディ企業や取引所が刑事捜査の対象になった時などに、何らかの命令が下される可能性はあるんだ。
カストディ企業や取引所がどれくらいのビットコインを持っているのか、ちょっと気になるかも。
ビットコインの発行上限2100万枚のうち、どれくらいを保管しているんだろう…?
ビットコインはETFのカストディ企業が大量に保有している?
企業のビットコイン保有データを提供しているBitcoinTreasuriesNetでは、企業・ファンド・国家などのBTC保有率は全体の約10%と示されています。※2024年1月27日時点
カストディ企業や取引所が多くのビットコインを保管しているのは事実ですが、現時点ではBTC発行枚数の大部分を占めているというわけではありません。
1万BTCとか、10万BTCくらいの規模がビットコインETFで動いてるって聞いたことがあるけど…
発行されているビットコインの大半がカストディ企業の元にある、っていうわけではないんだね。
カストディ企業や取引所保有のビットコインは今後増えていくかもしれないね。
だけど、個人ウォレットで保管されているビットコインが多いのもまた事実だよ。
ビットコイン保有分布(大まかなイメージ図)
Twice as much #bitcoin is LOST as is currently controlled by institutions and governments.
— Walker⚡️ (@WalkerAmerica) January 21, 2024
Only a tiny fraction of the world owns bitcoin, and after the halving in April, only 1.3125/21M @btc will be left to be mined.
It might make sense to get some, just in case it catches on. pic.twitter.com/DQGhrdsSEJ
INDIVIDUAL:個人 SATOSHI:サトシ LOST:永久に喪失 UNMINED:未採掘 COMPANIES:企業 FUNDS:ファンド・ETFカストディ企業など GOVERNMENT:政府 DEFI:WBTC
ビットコインはSEC(国家)の管理下に置かれた商品なのか?
ビットコインETFと同じカテゴリーのコモディティETFには原油・小麦・金などがありますが、これらの原資産(元になる資産)は緊急時に輸出入が制限される可能性はあるものの、「国家の管理下に置かれる」というとらえ方は一般的ではありません。
国家の管理下にあるという表現は、国家がその資産の価値や流通を厳格に制御している状態をイメージさせるもので、コモディティには一般的には当てはまりません。
「国家の管理下」というと、国が直接統制するような印象になるけど、どちらかと言えば「国家の法規制の下」っていう感じがするな。
「ビットコイン全面禁止!」のような扱いをされるのではなく、法整備が順序立てて行われることは、ビットコインにとってマイナスではない気がするよ。
あと、国家の管理下っていうと、何だか「ビットコインのネットワークを国が操作する」とかそんな気がしちゃうけど…
ビットコインネットワークを国が止めたりすることはできないんだよね?
もちろん、国家がビットコインネットワークを好きに操ることはできないよ。
ビットコインネットワークは世界中に分散されているから、国家の一存でどうにかできるものではないんだ。
国家は取引所やカストディ企業の保有するビットコインに対しては、状況によっては何かできるかもしれないけど、国家と言えどもビットコインネットワークは止められないんだね。
管理下っていう言葉は、ビットコインを全く知らない人にとってはちょっと誤解を招きそうな表現な気がしたよ。
「国家の管理下に置かれる」という表現にあてはまるのは、あくまでも取引所やカストディ企業の保有するBTCの請求権(要求する権利)じゃないかな。
個人がウォレットで保有するBTCや、そもそもビットコインネットワーク自体が国家の管理下に置かれることはないよ。
ビットコインと中央集権に関する一問一答
ビットコインと中央集権に関する話題について、もう少し知っておきたいな。
一問一答形式で、中央集権に関する話題について解説するよ。
ビットコインと他の仮想通貨の中央集権性を比較すると?
ブロックチェーンのノード数
ノード数 | |
---|---|
ビットコイン | 16556 参考:CoinDance |
イーサリアム | 7194 参考:Etherscan |
リップル | 35 参考:Wikipedia |
ドージコイン | 634 参考:Blockchair |
ネットワークのノード数から分散性を比較した場合、ビットコインは他のネットワークよりも分散性が高いことが分かります。
また、ビットコインは他の仮想通貨に比べ、コインの保有分布が比較的分散されています。
保有量上位のウォレットが保有しているコインの割合
- ビットコイン
上位4アドレスが3.54%のBTCを保有
上位111アドレスが15.59%のBTCを保有 - ライトコイン
上位3アドレスが6.74%のLTCを保有
上位115アドレスが37.1%のLTCを保有 - ドージコイン
上位15アドレスが49.72%のDOGEを保有
上位149アドレスが70.49%のDOGEを保有
参考:BitInfoCharts 2024年1月27日調査
(流通枚数に対し、上位アドレスが何%分のコインを保有しているかを示す)
コインの保有割合が表示される「CoinCarp」というサイトで見ると、ビットコインよりも保有ウォレットの偏りが大きいコインが多いんだ。
時価総額ランキング上位10コインで比べてみたら、一番保有ウォレットの偏りが小さいのはビットコインだったよ。(2024年1月27日調査)
「ビットコイン初期の頃にたくさん買った人に保有が偏っている!」っていう意見を見たことがあるけど、他の仮想通貨の場合は開発チームや初期投資家が多く保有することがあるんだね。
仮想通貨の中で比較するなら、ビットコインの保有率が特別偏っているという感じはしないよ。
ちなみに、ビットコインはPoWという仕組みを採用していて、ビットコインを大量保有していてもブロックチェーン自体に影響を与えられる訳ではないんだ。
一方、多くのアルトコインが採用しているPoSにはガバナンス投票の仕組みがあって、コインを大量保有している人の投票方針がネットワークに影響を与えることがあるよ。
アルトコインの中には、運営元のリーダーや運営企業のイメージが浮かぶコインもあるけど…
ビットコインは創設者のサトシ・ナカモトが姿を消しているのに動き続けているし、仮想通貨の中でも分散されているんだなって感じがするよ。
関連記事:ビットコインとアルトコインの違いは?有識者にインタビュー【どっちが人気?】
関連記事:サトシ・ナカモトは日本人じゃない?ビットコイン創設者の謎やポケモンとの関連性を独自考察
ビットコインはマイニングプールによって中央集権化が進んでいる?
「トップのマイニングプールを2つ3つ合わせると51%攻撃を仕掛けられる=ビットコインは中央集権化している」という意見が時折見られますが、この主張はやや飛躍したものと言えます。
※マイニングプール…小規模のマイナーが協力してマイニングを行い、収益を分け合う仕組み
※51%攻撃…悪意のあるマイナーがハッシュレート(採掘速度)の51%を支配し、二重支払いを実行できるようにすること
※マイナー…マイニングに参加する人々
※マイニング(採掘)…ネットワーク上で行われる取引を確認してブロックチェーンに正しく書き込み、報酬としてビットコインを得る仕組み
マイニングプールに集まる数千以上のマイナーが、参加するプール内で一致団結して意図的に攻撃を行うというのは、実際には現実的ではありません。
仮にマイニングプールが攻撃を引き起こそうとする場合、マイナーは別のマイニングプールへの切り替えが可能です。
51%攻撃をしたら、マイナーが持っているビットコインの価格は暴落するだろうし、すべてのマイナーが攻撃に賛成するとは思えないなぁ…。
それに、マイニングプールが51%攻撃を計画する場合、不正行為に反対するマイナーが情報をリークするだろうし、団結するのは難しそうだよ。
51%攻撃を企てるようなマイニングプールはマイナーや投資家からの信頼を失うよ。
長期的なビジネスモデルとして収益を得られるマイニングプールが、わざわざ評判を落とす行為をするか?というところだね。
関連記事:ビットコインのマイニングとは?現在の報酬や終了時期・やり方や仕組みを紹介
関連記事:ビットコインの51%攻撃とは?仕組みや実例・対策をわかりやすく解説
【まとめ】ビットコインは中央集権化が進んでいるのか
ビットコインは中央集権化している?ポイントまとめ
- ビットコイン現物ETFが承認されたものの、ビットコインネットワークが国家の管理下に置かれた訳ではない
- 取引所やカストディ企業は多くのビットコインを保管しているが、個人ウォレットで保管されているビットコインも非常に多い
- 他の仮想通貨に比べ、ビットコインが特別に中央集権化が進んでいるとは言えない
「ETFという形で中央集権的な金融市場にビットコインが取り込まれることが、ビットコインの中央集権化につながる」っていう意見があるみたいだけど…
ビットコインネットワークの分散された性質は、ETFが承認されたからと言って変わることはないよね。
ETFによって、ビットコイン市場にアクセスできるようになる投資家が増えるのは確かだし、ビットコイン市場がさらに広く受け入れられるようになるかもしれないね。
中長期的に投資層が広がり、より多くの投資資金が流入してビットコイン市場の成熟化が進んでも、ビットコインネットワークの非中央集権的な性質は維持され続けるよ。
ビットコインって何だか難しそうだし、よく分からないから何となく不安だったけど、他にも色々知りたいなって思ったよ。
ビットコインについて、もっと知っとこ!
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執筆者:Shigeru Minami
「知っとこ!ビットコイン図鑑」制作者。
ビットコイングッズのハンドメイド作家として活動中。