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トラベルルールのデメリットとは?仮想通貨の送金への影響や回避策・ビットコインの性質との矛盾点を分かりやすく解説

2月 15, 2024

トラベルルールのデメリットとは?仮想通貨の送金への影響や回避策・ビットコインの性質との矛盾点を分かりやすく解説
フィアット

仮想通貨のトラベルルールって何だろう?

利用者への影響があると聞いたけど…。

2023年6月に導入されたトラベルルールによって、取引所からの出金の一部に制限がかかるようになりました

仮想通貨を送付する人・受け取る人の住所やウォレットアドレスの情報が収集され、取引所で情報の保存が行われています。

この記事では、トラベルルールの影響や回避方法を分かりやすく解説するよ。

バッジャー君

本記事のざっくりまとめ

  • トラベルルールの導入によって、取引所から仮想通貨を出金する際に送付人・受取人情報の登録が必要になり、取引所で情報が保存されるようになった
  • 情報通知システムが異なる取引所の間では、直接仮想通貨を送れなくなった
  • 自分や送り先の情報が取引所に保存されるようになり、国や第三者にしばられないビットコインの特性と矛盾する側面がある

仮想通貨のトラベルルールとは?

仮想通貨のトラベルルールとは?

トラベルルールとは、仮想通貨取引所のユーザーが仮想通貨の送金を行う際に、送金元の取引所が受け取り先の取引所に顧客情報を通知することを義務付けた規則のことです。
マネーロンダリングやテロ資金供与対策を目的として、2023年6月から導入されました。

参考:暗号資産・電子決済手段の移転に係る通知義務(トラベルルール)

国際基準の規制を推進する「FATF(ファトフ)」は、FATF加盟国がトラベルルールを自国の規制に組み込むことを推奨しています。
トラベルルールの適用方法は国によって異なり、日本ではJVCEA(日本暗号資産取引業協会)主導で自主規制の導入が行われています。

送金時に提示する情報

  • 受取人の氏名・住所
  • 受取側の仮想通貨取引所の有無・名称
  • 取引の目的

※受取側の取引所には、送付人の情報(氏名・住所・暗号資産アドレス)と受取人の情報(氏名・暗号資産アドレス)が通知される

フィアット

送金時に提示した情報は、送信側・受信側の両方の取引所で保存されるんだね。
他にも、トラベルルールで影響が出ていることがあるって聞いたけど…。

トラベルルールの実施によって、取引所間の送金に制限がかけられたんだ。

例えば、国内取引所のビットフライヤーからGMOコインには、仮想通貨を送金することができないよ。

バッジャー君
フィアット

え!取引所によって送金ができないのは、何だか変な感じだね。

送金できない取引所に送る場合は、一旦自分のウォレットに送ることで制限を回避できるよ。

バッジャー君

トラベルルールの送金制限はウォレットを使えば回避できる

仮想通貨取引所のトラベルルールまとめ


自分で仮想通貨を管理する「プライベートウォレット」を経由すれば、トラベルルールの影響で送金できない取引所にも仮想通貨を送れます
「TRUST」「SYGNA」など、異なる情報通知システムの取引所間では直接仮想通貨を送れませんが、ウォレットを挟むことで対処可能です。

※追記:SBIVCトレードとビットポイントがSYGNAとTRUSTの両方に対応開始

プライベートウォレット(秘密鍵をユーザーが管理するウォレット)

  • ハードウェアウォレット…Ledger Nano・Trezor・Cold Cardなど
  • ソフトウェアウォレット…Metamask・Phoenixなど

例:ビットバンク(SYGNA)の場合

  • SYGNA導入のGMOコイン(国内取引所)には送れる
  • SYGNA導入のMEXC(海外取引所:通知対象国)には送れる
  • Bybit(海外取引所:通知対象国以外)には送れる
  • ×TRUST導入のビットフライヤーには送れない

通知対象国・地域(トラベルルールが適用される)

アメリカ合衆国、 アルバニア、 イスラエル、 カナダ、 ケイマン諸島、 ジブラルタル、シンガポール、 スイス、 セルビア、 ⼤韓⺠国、 ドイツ、 バハマ、 バミューダ諸島、フィリピン、 ベネズエラ、 香港、 マレーシア、 モーリシャス、 リヒテンシュタイン、ルクセンブルク

(今後追加される法域)
アラブ⾸⻑国連邦、 インド、 インドネシア、 英国、 エストニア、 ナイジェリア、バーレーン、 ポルトガル

出典:トラベルルールの対象法域について|金融庁(2024年2月13日に調査)

フィアット

取引所間で直接送れないことがあるのは不便だけど、ウォレットを経由すれば大丈夫ってことだね。

トラベルルールの詳細については、必ず各取引所の最新情報を確認しよう。

バッジャー君

トラベルルールのデメリットを分かりやすく解説

トラベルルールのデメリットを分かりやすく解説
フィアット

トラベルルールって何だか不便な気がするし、デメリットもありそうだよ…。

トラベルルール絡みの送金について、知っておくべき注意点を紹介するよ。

バッジャー君

取引所間の自由な送金ができない

トラベルルールの導入によって、通知システムの異なる取引所には仮想通貨を直接送金できなくなりました

例えば、通知システムの「TRUST」を導入するコインチェックと、「SYGNA」を導入するビットバンクの間では、仮想通貨を送金できません。
また、同じシステムを導入するコインチェックとビットフライヤー間でも、リップル(XRP)やステラルーメンなどの送金ができないなど、様々な点で制限が課せられています。

各取引所のトラベルルール対応(2024年2月13日に調査)

TRUSTを導入

※TRUST間で送付できるのはBTC・ETH・ERC-20トークンなどに限られる

SYGNAを導入

注意:Binance Japan

フィアット

海外取引所の場合、どの通知システムを導入しているのかが分かりにくいケースもあるんだね。

「仮想通貨の送付を反映できなかった場合、仮想通貨の返送はできない」と記載している国内取引所もあるんだ。

少額の送金テストを行って、送れるかどうかを確認するのが大切だよ。

バッジャー君

送金手数料が余計にかかる

トラベルルールを回避する際に個人ウォレットを挟む場合、送金作業が通常よりもひと手間発生することになります。
その結果、ビットコインのFee(手数料)や、アルトコインのガス代が余計に発生してしまいます

送金作業が1回増える分、GOX(送金先を間違えてコインを失う)のリスクもあるんだ。

バッジャー君
フィアット

コインの着金を待つ時間も二重にかかるし、ユーザーにとってはメリットを感じられないルールな気がするよ。

トラベルルールはマネーロンダリング対策になるのか

フィアット

トラベルルールはマネーロンダリングなどの犯罪対策で導入されたってことだし、それなら仕方がないのかな。

トラベルルールが本当にマネーロンダリング対策になるのかどうかは、疑問を投げかける声も見られるよ。

バッジャー君

世界レベルの犯罪行為を考えると、日本のトラベルルールがマネーロンダリング対策・テロ資金供与対策になるかどうかは不透明です。

これまでに起きている犯罪行為の中から一部を紹介します。

犯罪者による手口(例)

  • 口座売買で他者の口座を購入し、取引に利用
  • 本人確認(KYC)の規制が甘い海外取引所を使う
  • 分散型取引所(DEX)の利用
  • ミキシングサービスの利用(複数のユーザーから預かったコインを混合し、異なるアドレスで再配分することで追跡困難にするサービス)
  • プライバシーコインの使用(モネロ・ジーキャッシュなど)

※上記は事例の紹介であり、マネーロンダリングを奨励または推奨するものではありません

フィアット

確かに、本当に悪い人だったら色々な抜け道を使うかもしれないね。

日本はトラベルルールをいち早く導入しているけど、各国でトラベルルールに対する温度差はあるし、現時点で足並みがそろっているとは言えないんじゃないかな。

バッジャー君

トラベルルールの問題点

トラベルルールの問題点
フィアット

トラベルルールについて、他にも問題点があるなら知っておきたいな。

懸念点として挙げられている点をいくつか紹介するよ。

バッジャー君

ビットコインの性質に逆行している

【ビットコインの前提知識】分散型・中央集権型の違い

ビットコインは管理者のいない分散性の通貨で、第三者による制限を受けずに個人間で直接取引ができる性質があります。
しかし、トラベルルールは取引所間での送金を制限しており、国や第三者にしばられないビットコインの性質とは逆行しています

ビットコインは中央集権的な管理や規制を受けない、自由でオープンな金融システムを目指して作られているんだけど…

トラベルルールはビットコインの特性とは矛盾する規制ではあるよね。

バッジャー君
フィアット

規制によって、ビットコインの技術革新が阻害される可能性もありそうだね…

何だかちょっと心配だよ。

取引所の情報流出リスク

トラベルルール施行により、仮想通貨を送る側の取引所は受取人の名前やアドレスに加え、新たに受取人の住所などを取得する義務が発生しました。
また、仮想通貨を受け取る側の取引所は、通知を受けた必須情報のすべてを保存する義務が生じています。

仮想通貨の送金を行うと、名前や住所・ウォレットアドレスや送金枚数が紐づけられて取引所で保存されるようになり、取引所が情報流出を起こした際にユーザーが危険にさらされるリスクが上がります

企業による情報流出の事例

  • NTTビジネスソリューションズ(約3万件の個人情報が流出/2024年)
    …派遣されていた社員が個人情報を不正に持ち出し、名簿業者に売却
  • 東京ヴェルディ株式会社(約2700名のクレジットカード情報が流出/2024年)
    …システム管理者用アカウントが不正利用され、決済フォームが改ざんされていた
  • Coinbase(約6000名のアカウントが攻撃を受ける/2021年)
    …ユーザーアカウントが不正アクセスを受け、仮想通貨を不正に出金された
  • PayPay株式会社…(最大2000万件の情報が流出した可能性/2020年)
    …セキュリティ設定ミスにより外部アクセスを受け、PayPay加盟店260万店舗の住所・売上振込先・営業対応履歴などの情報が流出
  • LINE株式会社(4000件以上の不正ログイン/2020年)
    …4000件以上のアカウントが乗っ取られ、なりすまし行為によるフィッシング行為が発生

参考:個人情報漏洩事件・被害事件一覧|Cyber Security.com

企業や自治体の情報流出事件はたくさん起きていて、2023年の1年だけでも100件以上※発生しているんだ。
※被害が1000件以上の事件を抽出

バッジャー君
フィアット

企業が情報流出を起こすのは、管理者アカウントへの攻撃・職員メールなどへのフィッシング攻撃・内部者の情報持ち出しなど、様々な原因があるんだね。

なお、セキュリティの分野では「5ドルレンチ攻撃(5ドルで買えるレンチで脅迫する)」という用語が使われているよ。

ビットコインを狙う犯罪者の中には、物理的な暴力で資産を盗もうとする人もいるんだ。

バッジャー君
フィアット

ウォレットアドレスと自分の名前や住所がセットで保存されるのはちょっと怖いなぁ。

多くの量のビットコインを持っている人ほど危険度が上がるし、情報流出が心配になるね。

手数料増加の可能性

仮想通貨取引所がトラベルルールに準拠するには、新しいシステムの導入や継続的な管理が必要になり、経営面でコストが増加します。

これらの負担をまかなうために、手数料やスプレッドなどユーザーから徴収する費用を上げる可能性が考えられます。

フィアット

トラベルルールに関連した業務が増えて、人件費も増えるかもしれないよね…。

ユーザーの個人情報を守るシステムを維持するにはお金がかかるだろうし、トラベルルールは取引所にとっても大変な規制だとは思うよ。

バッジャー君

ビットコインのトラベルルール回避方法

フィアット

トラベルルールの影響で送金できない取引所宛てに、ビットコインを送る方法が知りたいな。

うーん、送金する時にウォレットを挟めば送れるけど…

そもそも「トラベルルールの影響で送れない取引所にビットコインを送る」ということを見直しても良いんじゃないかな。

バッジャー君

送金できない取引所にビットコインを送る方法(例)

  • 取引所間の送金にウォレットを経由する
    →ハードウェアウォレット・ソフトウェアウォレットを利用
  • 情報通知システムが同じ取引所を利用する
    →TRUST・SYGNAのどちらを導入しているかを確認した上で口座を開く
  • 別の仮想通貨で送る
    →普段使い慣れているウォレットがある場合、そのウォレットに対応している仮想通貨を送金に利用する

ビットコインを管理できるウォレット

  • ハードウェアウォレット
    Ledger Nano・Trezor
    Cold Card(ビットコイン特化) など
  • ソフトウェアウォレット
    Phoenix(ライトニング向けスマホアプリ)
    Blue Wallet(オンチェーン向けスマホアプリ)
    Sparrow Wallet(上級者向け、ハードウェアウォレットと連携可能)

※モバイルアプリのWallet of Satoshiなど、カストディアルウォレットでもビットコインを保管できる。
ただしプライベートウォレットではない(秘密鍵を運営元が管理する)ため、個人ウォレットに該当しない点に注意

仮想通貨取引所からビットコインを出庫する時は送金手数料がかかるから、使用用途によっては手数料負けする可能性があることも知っておこう。

バッジャー君
フィアット

受け取り側・送り側、両方の取引所に住所やウォレットアドレスを登録したり、審査を待ったりする必要もあるんだね。

ビットコイン支払いから考えるピアツーピアの性質

ビットコインのライトニング決済を店頭で行う際は、ウォレットアドレスのQRコードを読み込むだけで支払いが完了します。
自分や相手の個人情報を第三者に提示する必要もなく、審査もいらず、数秒で相手にビットコインが届きます

一方、取引所の口座にあるビットコインで支払いを行おうとすると、相手の名前やウォレットアドレスを取引所に登録し、審査に通らなければ決済はできません
支払先の名前やウォレットアドレスが、仮想通貨取引所に紐づけられて管理されることになります。

ビットコインの取引記録はブロックチェーンという公開された台帳に記録されるけど、送った人の身元情報に直接結びつく情報は記録されないよ。

でもトラベルルールは相手方の情報を取引所に提供することになるし、ビットコインのピアツーピア※の特性とは矛盾している、という声もあるんだ。
※ピアツーピア(P2P/端末同士で直接やり取りする)

バッジャー君
フィアット

自分や家族を犯罪行為から守るために、ビットコインの匿名性を重んじている人も多くいるんだよね。

世界では自分の資産を政府から守るためにビットコインを保有している人もいるみたいだし、国からの規制について無頓着でいるのは良くないんじゃないかなって思ったよ。

今後トラベルルールの規制が増える可能性はあるのか

トラベルルールの枠組みは今後変更される可能性があり、規制強化が進むことも考えられます
例として、2023年6月の導入時にはトラベルルール通知対象国・地域は20でしたが、2024年1月には新たに8の国・地域が追加される改正案が公表されました。

フィアット

トラベルルール導入時は様々な声が上がっていたけど、少しずつ話題にならなくなっているし、いつの間にか規制強化が進んでしまう可能性もあるよね…。

いきなり法律が変わることはないけれど、トラベルルールの規制がどのように変化していくのか、注意して見ておいた方がいいかもしれないね。

バッジャー君

【まとめ】仮想通貨のトラベルルールとは

【まとめ】仮想通貨のトラベルルールとは

トラベルルール・ポイントまとめ

  • トラベルルールの導入によって、取引所から仮想通貨を出金する際に送付人・受取人情報の登録が必要になり、取引所で情報が保存されるようになった
  • 情報通知システムが異なる取引所の間では、直接仮想通貨を送れなくなった
  • 自分や送り先の情報が取引所に保存されるようになり、国や第三者にしばられないビットコインの特性と矛盾する側面がある
フィアット

トラベルルールの影響で送金できない取引所には、個人のウォレットを挟めば送れるんだね。

でも、送金作業が1回増える分GOXリスクが上がるし、手数料負担や待ち時間が増えてしまうのも残念だよ。

トラベルルールがマネーロンダリング対策に役立つかは未知数だけど…

トラベルルールによって情報流出リスクが上がり、一般の利用者が危険にさらされるリスクが上がっていることもおさえておこう。

バッジャー君
フィアット

ビットコインって何だか難しそうだし、よく分からないから何となく不安だったけど、他にも色々知りたいなって思ったよ。

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Sigeru Minami

執筆者:Shigeru Minami

「知っとこ!ビットコイン図鑑」制作者。
ビットコイングッズのハンドメイド作家として活動中。

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