ビットコイン支払いができる、ライトニングマルシェについて知りたいな!
ライトニングマルシェはビットコインを使える機会を増やし、ビットコインのマスアダプション(どこでも普通にビットコインが使える世界)を推し進めることを目的とした活動です。
回を重ねるごとに着実に進歩しているマルシェですが、初期の頃から様々な苦難に見舞われている側面もあります。
この記事は、ライトニングマルシェで活躍されているbcatsさんとお話した内容を、文章にまとめたものだよ。
マルシェの歴史やイベントの様子、bcatsさんのビットコインに対する思いなどをうかがったから、ぜひ最後まで読んでほしいな。
メピカバリの佐藤さん、bcatsさん、筆者(Minami)が話している様子は、以下のPodcastで聴くことができます。
【bcatsさん&メピカバリ佐藤さん】ライトニング決済についてゆるく雑談
bcatsさんについて
bcatsさんはどんなことをしている人なのかな?
僕はビットコイン関連の仕事はしておらず、本業は違います。
マルシェや、匿名配送などいろいろなサイトを作ったりして、社会実験のようなことを楽しんでいる、いちビットコイナーです。
bcatsさん:ビットコインは4、5年前から勉強していて、「これは世の中を変える」と思って、勉強すればするほどのめり込みました。
Diamond Handsが2、3年前に始まった頃、ライトニングネットワークのノードを作りたくて自分で勉強しましたが、らちが明かなかったので、Diamond Handsの皆さんと集まって、Zoomで繋いでノードを立てて、ルーティングに参加しました。
協力して楽しいことをやりたいと思い、サイトを作ったり、ちょめじさんのところ(ココロータス)で弁当を買ったり、Spotlightで記事を書いたりしました。
メピカバリさんに「ビットコイン支払いをやってみない?」という話をして実現した、そんな人間です。
※Diamond Hands…フルノードの運用と、ライトニングのルーティングを研究するため2021年に始まったコミュニティ。現在は日本市場を牽引するビットコイン専門企業として、ビットコインやライトニングの普及を総合的に支援している
※ココロータス…ライトニング決済に対応しているキッチンカー
※Spotlight…ビットコインを活用したデジタルコンテンツを配信できるプラットフォーム
最初期のライトニングマルシェの様子
ライトニングマルシェって、どんな感じで始まったんだろう?
bcatsさんがマルシェを企画していたりするの?
僕がやっているわけじゃないんですが、成り行き上色々とサイトを作ったり、取りまとめたり、みんなに割り当てなどをやっていたり……全然僕が主宰っていうわけではないんです。
元々は「聖地開拓」という企画で、Kojiさん(東晃慈さん)がビットコイナー反省会の動画内で、「世界中に色んなビットコインハウスなどの拠点・集まる場所が出来てきて、日本にもそういう場所が欲しいよね」って話題にしたんですよね。
一番最初は高円寺が中心で。
Kojiさんが町を散歩して、どんな町かを知ってみて。
その時に「フリマとかいいんじゃないですかね」という提案も上がり、そこから始まってる企画です。
きっと最終的にはKojiさんはカフェを開きたいっていうのが夢なんですよ。
いきなりお店を借りたり、店舗の固定費を払うのは大変だし、だけどどこか聖地を作りたいねっていうのはみんなの思いで。
みんなで調べたりしていたら高円寺のフリマを見つけて、それが一番最初のきっかけですね。
僕は高円寺は全然知らない町だったので、最初は全然で。
ステッカーを作って匿名配達していたので、「ステッカーだったら僕やれますよ」って言っていましたね。
高円寺ライトニングフリマの思い出
初期のライトニングフリマでは、「押し込まれ」っていう出来事があったって聞いたよ。
最初から実はちょっと、商店街の関係者の人が、ビットコインというキーワードで怪しまれたんですね。
最初はお店を出した人が5~6人くらいで、バッジャー君の人形を作ったり、₿のマークが入ったクッキーとか、コーヒーとか、色んなものをそれぞれ作っていて。
そうしたら、人が集まりすぎて、すごい人だかりになって。
狭い商店街なので、何回か「通路を開けてください」と注意されたんです。
僕達も気を使って、誘導してくれた方もいるんですけど、それでも100人ぐらい集まったんじゃないかな。
皆普段それぞれ色んな活動している人なんですけど、楽しく話をすると盛り上がっちゃって、なかなか通路が開かなくて。
最終的に地元の人が、「出店料を返すから、今すぐ帰れ」と。
本当は20時までできたんですが、18時ぐらいで「帰れ」って言われて、そそくさと片付けて解散しました。
Kojiさんが関係者の人に話を聞きに行った時に、
「お前らのやってること分かってるんだ、俺こういうの詳しいんだ。そういうのはルノワールでやれ」
って言うのを、周りの人も聞いていて。
あれが伝説の“押し込まれ”という、1年前のことです。
そんなことがあったんだ!大変だったんだね…。
その後、皆でご飯を食べながら「どうしようかね」って反省会をして。
皆ちょっと沈んでいたんですが、ビットコイナーはそういうのを逆に楽しむという、普段からの耐性ができてるのか、皆なんか嬉しそうなんです。
おかしいですよね。
ビットコイナーは強いね!嬉しそうだなんて、何だかおもしろいなぁ。
自由が丘ライトニングマルシェ
最初の高円寺ライトニングフリマで押し込まれた後はどうしたのかな?
「高円寺はできないからどうしようか」っていう時に、ひかり街商店街はどうかなと。
昭和の香りのするテナントショップがずっと並んでいて、結構空いちゃってるんですよね。
そこを1日1万円とか2万円で貸してくれると知っていたので、Kojiさんに相談して、ここならもう1回フリマできるんじゃないかって言って。
借りる時に企画書とか出さなくちゃいけないんですよ。
また押し込まれちゃいけないので、周りの商店街の人にも企画書を持って行って、「怪しい者じゃないんで」って言いながら事前に説明しました。
審査は通って、お声かけして、スポンサーは悟コインさんと、Burry Market Researchの内田さんと、Fulgur Ventures(フルグル)で、出店料を出してもらって。
僕たちはそこでみんな自分たちで作ったものを出そう、という形でやりました。
なるほど、1回目の押し込まれを糧にして、同じようなことにならないように取り組んだんだね。
自由が丘の1回目は大丈夫だったんですけど、2回目は……あまり公表していないんですけど、「お前たちうるさすぎる」ってクレームが来てしまって。
実は押し込まれる間際まで行っているんです。
ただ、このクレームの後に丁度よかったのは、マルシェが朝日新聞と日経新聞に出たんですよ。
その記事をテナントの貸し出しの所に送って、「こういう形で社会実験としてやりました」って言って。
商店街全体が活性化すればいいなっていうのももちろん目的で、ビットコイナーの人たちに周りで買い物をするようにお願いしたり、僕たちも実際に周りの店で買ったりして、配慮はしていたんですよ。
一部の人からクレームがくるのはつらいところだね…。
ほとんどの方、周りの方は好意的で、「活気があっていいわね」って言ってくれている商店街の人もいました。
一番最初に企画した時には、商店街とかじゃなくて、どこかの貸し会議室や体育館のような部屋を借りて、その中でやったらどうか、という話も上がっていたんですよ。
その方が押し込まれる心配もないので。
ただそれだと内輪で集まっているだけだし、もっと色んな人、商店街の通りを歩いてる人たちにも見てもらって、「なんだろうなんだろう」って思ってもらうことが、ビットコインを普及するためには大切だよねって話になって。
なので、本当は商店街の人たちにも、うまくいけば「ビットコイン決済やってみませんか?」って広がっていったらいいなという妄想があったんですが、なかなかそこはまだまだ難しいかなと。
すごい!
確かに、体育館とかを貸し切ればビットコイナーが集まるマルシェはできるけど、あえて商店街でマルシェをすることで、ビットコイン決済を多くの人に広めようとしているんだね!
目的がビットコインの普及、皆が普通にビットコインを使える世界に早くなるための1活動で、社会実験なので。
渋谷ライトニングマルシェについて
BitcoinTokyo2024で開催された渋谷ライトニングマルシェはどうだったのかな?
大成功だったと思います。まずは運営の方々が本当に素晴らしい会にしてくださって、感謝をお伝えしたいです。
みんなが工夫してオリジナルのものを作って売っていましたね。
僕はビットコインのホワイトペーパーを額縁に入れて販売しました。
特に良かったことは海外勢に認識されたことです。
元々このマルシェの企画は、カナダのサタデーマルシェという取り組みに近いものをやりたいなと思って始めました。
Kojiさんと話して、自由に名前をつけて独自にやろう、海外に発信しようということで、ライトニングマルシェという名前にしました。
今回、世界中からたくさんのチームが集まって、Wallet of Satoshiがスポンサーもしてくれまして。
みんながライトニング決済を使っている様子を見てくれて、マルシェのアクティビティが海外に広まったと思うので、それが一番良かったことかなと思います。
Wallet of Satoshiのツイート
Exciting to see products priced in sats at the Lightning Market during @BTCTokyo2024! A glimpse into the future of payments. Come check it out! ⚡ pic.twitter.com/tp98FNc7kf
— Wallet of Satoshi (@walletofsatoshi) September 22, 2024
あとは、沖縄でお酒を売っているナガハマさんについてですね。
昔、Spotlightに匿名配達のLightning 決済ができるサイトを作る記事を書いた時に、ナガハマさんがそれを見て、サイトを作ったそうです。
僕より前にライトニングで決済していたようですが、メールで手動でインボイス発行してもらうやり方だったようで、注文も少なかったのかもしれません。
僕がサイト作成のチュートリアルを書いたら、ナガハマさんがそれを見て「自分で作れました」と言ってくれて。
僕もすぐそのサイトを使って注文しました。
今回、ナガハマさんと初めて会って、美味しいお酒を買えて良かったです。
ライトニング決済でお酒を飲めるのは素敵だよね。
みんな飲んでいましたよ。
真っ昼間から唐揚げで一杯引っ掛けてます。#bitcointokyo2024 #ライトニングマルシェ pic.twitter.com/1XrXqXyo8O
— tanakei (@keitnk_jl1cy6r2) September 22, 2024
じゃあ、逆に、次回のライトニングマルシェで改善したいことについても聞いてみたいな。
次どこでやりますかね?
自由が丘でもいいんですけど、こないだ練木照子さんがBitcoin Hub Tokyoを作りますと発表されていて。
四谷っていう情報も多分出ていると思うんですけど、そこが拠点になっていったらいいなと思います。
これも僕が決めることじゃなくて、きっとまたわちゃわちゃみんなで話しながら、「こんなことやりたいね」っていう風にやっていくのがいいところだと思うので。
皆さんやりたいことをそれぞれやれる、それぞれスキルや強みがあるので。
集まってできたらいいなと思います。
関連記事:ライトニングマルシェとは?ビットコイン好きな人々の草の根活動を紹介
関連記事:Bitcoin Tokyo 2024とは?日本初のビットコイン特化カンファレンスを解説
ビットコインをあまり知らない人に対して
bcatsさんはビットコインの普及活動をされているけど、ビットコインを知らない人に伝えたいことがあれば聞いてみたいな。
うちでは奥さんがビットコインに対して理解があって、マルシェも手伝ってくれているんですが……
奥さんが仲の良い友達に「ビットコイン…」っていう話をちょっとでもすると、「怪しい」とか言われちゃうらしくって。
つらい。
僕が説明をしたりすると、分かってくれる人は何人かはいるんですけど、やっぱりそういう啓蒙活動がまだまだ必要だなと。
ビットコインスタンダードを読めば一番なんですけど、なかなか長くてちょっと難しかったりするので、いきなり「全部読んで!」っていうのも難しいので。
今度、練木照子さんが漫画を作るって言っていて、僕もずっと前からやっぱり漫画だろうなって思っているんですよ。
例えば世の中でおじさんたちに流行っているサウナも、元々漫画から始まってるんですよね。
マスアダプションするには漫画が一番だと僕も思っていたので、漫画という話に期待するのと、僕も何か出来たらいいなっていう風には思ってます。
bcatsさんとビットコイン
そういえば、bcatsさんは先日バリで行われていたビットコインのイベントに参加されていて、熱心に活動されているなって感じたよ。
あれは本当に偶然だったんですけどね。
以前、Kojiさんが「ビットコイナーとは、ビットコインを昔から知ってるとか、最近知ったとかは関係なくて、たくさん持っていようと、少ししか持っていなくても、ビットコインを持っていなくても、ビットコインが世の中を変えると信じて、1人1人が行動する人、自分が信じる行動をする人」と定義していて、僕はそれがしっくり来ていて。
僕はビットコインが世の中を変えるって本当に思っています。
なので、僕が出来ることは何かなと思ってやっています。
Kojiさんのビットコイナーの定義については、Diamond Hands Magazineの「ビットコイナーって結局何なの?新しいライフスタイルの象徴??」に記されています。
https://diamondhandscommunity.substack.com/p/095
この間、照子さんがTwitterで「ビットコイン貯金は1人でできる反戦運動」とツイートしていたんですよね。
ビットコインスタンダードにも書いてあるんですが、戦争はお金・戦費が底をつけば終わる。
法定通貨だとどんどん戦費調達出来て、戦争を終わらせなくさせている。
終わりのない戦争の元凶だって書かれていて、僕もそう思っています。
悪くしているのはFiatなどの法定通貨だと思います。
戦費が底をつけば戦争は終わる。インフレ税を財源に国民の富を奪い尽くすまで戦費調達できる法定通貨制が終わりのない戦争の元凶。戦争に加担したくなければ、法定通貨をビットコインに替えればいい。ビットコイン貯金は1人でできる反戦運動。 https://t.co/TcGuUAwEmV
— Teruko (@TerukoNeriki) September 27, 2024
ビットコインを知って、勉強を始めたのは2018年~19年頃です。
1番最初の問題意識はアベノミクスが始まった時です。
2012年だったと思いますが、アベノミクスが始まって、もうこれはダメだって思いました。
日本円を持っていたら絶対ダメだって思って、日本円を捨てるというか。
だからほとんど日本円の貯金は持っていません。
その時点でビットコインは知っていましたが、結びついていなくて、勉強はしていませんでした。
2018年頃海外に1年ぐらいいて、その時にビットコインのことを少し勉強したら、「僕が必要だったのはこれだった」って気が付きました。
ビットコインが無かったら本当に色んな意味で不安で、あるからこそ安心できる、心のよりどころになっています。
そういう未来になるだろうなと思っているので、Kojiさんの「ビットコイナーとは」っていうのがすごい響いて、僕ができることは何かなと思って。
ただ楽しいからやってるんですけどね。
素晴らしい話だね。
例えば海外に行く時にも、ビットコインが便利だったりっていうのも実感することはあるのかな?
海外でお金が送金出来なくて、ものすごい苦労もしていました。
イギリスに1年いたんですけど、ひどいのは家賃を1年間前払いしろって言われたんですよ。信用がないからだって。
日本円を持っていなくて、ポンドで貯金していたので払ったんですけど、払う時にも手数料を取られたり。
送金がものすごく大変だったり、向こうに行って少しお金を使うとすぐ日本から電話がかかってきて、すごいイライラすることばっかりで。
自分のお金なのに自由に動かせないっていうストレスが溜まっていたのもありました。
それでビットコインを知って勉強し始めて。
決済としてのビットコインの機能と、Store of Value・価値の保存っていうところもそうだし、金融包摂・銀行口座を持っていない人たちに金融サービスを提供するっていう思想にも共感します。
政府のインフレ、アベノミクスもそうですけど、そういうものに対するアンチテーゼというか、僕にとって本当に必要だったんです。
ビットコインのコミュニティは、Kojiさんをはじめ、おかしなことに「おかしい」ってちゃんと言うじゃないですか。
一時期DeFiとかWeb3とか話題になった時に、一応勉強しようかなと思って勉強したんですけど。
勉強しなくても、これはおかしい、詐欺というか、ただの金儲けをする道具だっていうのはすぐ分かりました。Kojiさんがそれに対して迎合していかないっていうのは、信用できる人なんだなって思いますね。
DHが最初始まった時に、最初僕も緊張しながら、みんなで夜な夜なライトニングのチャネルを繋いで、勉強会をして。それが楽しくて。
みんなやっぱり信念があって、ビットコインの未来が見えている人たちばっかりなので、だから楽しいです。
終わりに
bcatsさんのビットコインに対する思いを聞けて、とてもうれしいな!
bcatsさんはSNSなどで表立って発信をされている訳ではないけれど、こんなに熱い思いを持ってビットコインの普及活動をされているって知れて、すごく良かった!
ビットコイナーが「ビットコインが世の中を変えることを信じて、1人1人が行動する人、自分が信じる行動をする人」だと仮に定義するとして。
bcatsさんはご自身が出来ることを考えて、それを行動に移しているんだね。
ビットコインの普及活動って、「ビットコイン関連のインフルエンサーに丸投げ!」みたいに思う人もいるかもしれないけど、そうじゃないよね。
ビットコインが好きな人がそれぞれ、できることを行動に移すことが大事なんだって、bcatsさんの話を聞いていて思ったよ!
bcatsさん、今回はお話を聞かせてくださってありがとうございました!
bcatsさんのTwitter(X)アカウント
https://x.com/bcats8
bcatsさんのブログ(Spotlight)
https://spotlight.soy/6REJwIUW9H0HFh0g
執筆者:Shigeru Minami
「知っとこ!ビットコイン図鑑」制作者。
ビットコイングッズのハンドメイド作家として活動中。
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