ビットコインにはなぜ価値があるんだろう？
単に、売り買いでお金もうけを目指すためのコインなのかな？
ビットコインは目には見えないデジタルなお金で、「欲しがる人がいる理由がよく分からない」と考える人もいるかもしれません。
価格の上げ下げが注目を集めやすいビットコインですが、有識者はビットコインにどのような価値があると考えているのでしょうか。
この記事は、ビットコインの有識者である東晃慈氏への動画インタビューを文章にしたものだよ。
東氏は2014年からビットコイン事業に携わっていて、仮想通貨業界の移り変わりをよく知っているから、ぜひ最後まで読んでみてね。
監修者：東晃慈
2014年の黎明期からビットコイン関連事業に取り組む国内業界の草分け的存在の一人。
Diamond Hands共同創業者／YouTubeチャンネル「ビットコイナー反省会」運営
ビットコインの価値はどのように推移してきたのか
ビットコインって、どんな風に価値がついてきたんだろう？
前よりも価格が値上がりしたと聞いたよ。
ビットコインには、最初はほとんど市場価格はついていなかったと認識しています。
ビットコインが始まった2008年、正確には2009年なんですけど、マイニング※という仕組みが最初からありました。
自分のコンピュータで特定のソフトウェアを回すことで、新しいビットコインを生成する、マイニングができるというのは、昔からあったんです。
※マイニング…取引の承認に必要な計算作業を行い、報酬にビットコインをもらえる仕組み
ただ、しばらくはみんな趣味でマイニングをしていただけで、ビットコインをマイニングしても市場がなく、売買をする人がいなかったので、値段がついていなかったという認識です。
2年くらいは、ほとんど市場価格はついていなかったんじゃないでしょうか。
ビットコインが生まれた時は、今のような価値は全然なかったんだね！
そこから少しずつ、最初の方は本当に趣味みたいな程度で、小さい金額でビットコインの個人間での取引が始まります。
少しずつビットコインに関心を持つ人が増えていって、取引所と呼ばれるビットコインの売買ができるサービスが出てきました。
当時は、マウントゴックスという大きな取引所があり、少しずつ売り手と買い手が増えて、価格が少しずつついて、上がってきています。
価格は上がったり下がったりしますが、長期の目線で見ると、ビットコインの価格は上がってきているという感じです。
今では1ビットコインに数百万円の価格がついているんだ。
10数年前に戻って、ビットコインを買いたいと思う人はたくさんいるかもしれないね。
関連記事：ビットコインのマイニングとは？現在の報酬や終了時期・やり方や仕組みを紹介
ビットコインはなぜ価値があるのか
でも、どうしてビットコインに価値があるんだろう？
先ほど「取引が色々発生して、売買が発生して、価格がつき始めた」と言いましたが、そもそも何で「みんながビットコインを欲しがっているのか」ですが…。
もちろん、投資の目的だったり、売買を通して価格差で儲けたりとかも当然あるんですが。
より明確なところで「ビットコインに価値がある」と言える理由、ユースケースの話をすると、1つは「ビットコインは希少性があるデジタルアセット（資産・財産）」だから。
もう1つは、国際送金だったり、国境をまたいだ送金をするのに非常に便利という特性があります。自分自身も個人的にその恩恵を預かってる1人です。
もう1つは拡張性。技術として色々なアプリケーションに組み込んで、新しいビジネスモデルを作ることができる。
希少性、送金の特性、拡張性。
主にこの3つが分かりやすい所ではあるのかなと思ってます。
ビットコインの価値①希少性
希少性って、手に入れづらいレアなモノってことだよね。
希少性についてはゴールド（金）がよくビットコインの比較で出され、ビットコインはデジタルゴールドと言われることもあります。
ビットコインは設計上、2100万枚という発行上限があります。
また、管理主体がいない形のネットワークを維持していて、その最大発行枚数を勝手に変更することが非常に難しいので、事実上希少性があるという仕組みです。
ゴールドも同じように、地球上に存在するゴールドには限りがあって、少しずつそれが掘られていて、非常に希少性が高い。
限られた量しか存在しない資源は、「欲しい！」と感じる人も多くいるんだ。
一方、円やドルなどの法定通貨は、基本的には政府と中央銀行が発行枚数を決めています。供給量に制限がなく、いくらでも刷ることができてしまう。
希少性がない法定通貨と比較して、発行上限があるビットコインの方が健全なお金かもしれない。
あとは今、日本円のインフレーション、円安が進んでいるじゃないですか。
簡単に言うと、中央銀行が円を刷りまくった結果として、1単位あたりの円の価値が少しずつ下がってきているんですけど。
円の価値が下がった時に、「希少性が全くない法定通貨」と「希少性があるビットコイン、もしくはゴールドみたいなもの」のどちらを保有するかという観点において、ビットコインには価値があると言えるのかなと思います。
関連記事：【イラスト解説】ビットコインって何？仕組みや何に使えるのかを初心者向けにわかりやすく解説
ビットコインの価値②国際送金
ビットコインはお店での支払いに使えるって聞くけど、それならPayPayを使えばいいんじゃない？
実はその意見は間違ってはなくて。
ただ、ビットコインが一番真価を発揮しやすいのは、国境をまたいだ送金をする時ですね。
銀行で国際送金をしたことがある人ならイメージしやすいかもしれないですけど。
やっぱり、一つの国から別の国にお金を送ると、色々な制約があったり、時間がかかったり、お金がかかったりと、すごく大変なんですよ。
それに対してビットコインは、特定の国に依存したネットワークではありません。
自分で秘密鍵という、ある種パスワードみたいなものをきちんと管理すれば、日本でも、アメリカでも、ヨーロッパでも、アフリカでも。自分の資産をデジタルな形で、国をまたいで持っていけるというのが、大きな特徴や強みですね。
ビットコインではなく、銀行口座などを利用する場合。
例えば自分は普段台湾に住んでいるんですけど、日本から台湾にお金を銀行口座へ送金だったり、別の形で送ろうとすると、すごく大変でお金もかかるんですよね。
自分で自分の資産をちゃんと管理できて、どの国にもポータブルに持っていけるというのは、すごく重要な特徴であり、価値の源泉になっているのかなと思いますね。
へぇ～。ちょっと便利かも。
日本だけで生活しているとあまりイメージできない話かもしれないですけど、旅行や出張などで色々な国に行く人にとっては、すごく分かりやすいメリットなのかなと思います。
自分も色々な国に出張で行くことも多いですし、日本に今住んでないんですけど、自分の資産を管理する方法として役に立ちますね。
ビットコインの価値③拡張性
拡張性って、今ある機能をさらに広げられるってことかな？
そうだね。新しい使い方ができるようにしたり、より素早い処理ができたりするような開発が行われているよ。
ビットコインは送金を行う技術ですが、決済など色々なサービスの基本にもなります。
今だと、例えばPayPayやPayPalなど色々あると思うんですけど。簡単に言うと今の決済の仕組みって、技術的にもイケてないものが多かったりします。
特にクレジットカードは古い技術ベースの仕組みで、非常に複雑です。
ビットコインは、古い仕組みをシンプル化して、色々なサービスにビットコインを組み込むことができます。
例えばマイクロペイメント（少額決済）の使い道です。サービスを使うと、1円以下のビットコインが瞬時に送れる、もしくは受け取れるといった新しいビジネスモデルが構築できます。
起業のネタというか技術として、ビットコインをどんどん色々なものに組み込んで、サービスを改善していくような用途にも使えます。
1円以下のビットコインが送れるの？
それって、今までの技術ではできないってことだよね。
従来の決済サービスでは、あまりに小さい金額の送金は手数料が高くついてしまうから、少額の送金や決済はできなかったんだ。
ビットコインの低コストな送金技術を使えば、秒単位で送りたい相手に直接届けられるよ。
PayPayは基本的に本人確認をして、銀行口座がないと使えない。
それに対して、ビットコインは誰でも使えて、事前の本人確認や「パスポートを出してください」といった要求がありません。
気軽に誰でも使えてアクセスできる特性は、重要な特徴であり、ビットコインに価値があると言えます。
少なくとも他の集権的な、PayPayや金融系のサービスと比べて、ビットコインが異なる価値を持っている理由の一つだと思います。
関連記事：【漫画】ビットコインの仕組みを図解で分かりやすく解説【初心者向け】
ビットコインには価値の裏付けがない？
価値の裏付けって、何のことだろう？
価値の裏付けとは、お金や財産に価値があるとみなされる理由や根拠のことだよ。
「円は価値の裏付けがあるけれど、ビットコインは価値の裏付けがないから危険」とか、「投資すべきではない」とか、そんな意見があるんだ。
非常に多い意見の一つですね。何となく分かる部分と、あまり見えていない部分が多いと感じる部分があります。
「ビットコインに価値の裏付けがないけれど、円には価値の裏付けがある」という意見は結構あるんですよね。
例えば、「政府が管理しているから、政府が何とかしてくれるから、円には価値の裏付けがある」とか。
「税金を支払うのに円が必要だから、それが価値の裏付けになっている」というような話があるのですが。
それは、日本は政府の機能がある程度しっかりしていて、機能しているので、みんなが政府に対する信頼を持って、円に価値があると感じているのではないかと思います。
そして、政府が円を流通させる強制力や徴税（税金を徴収）する能力があるから、日本円には価値がある、裏付けがあると言えるのだと思います。
うん、日本円には普段当たり前のように使っているし、特におかしいとは思わないよ。
ただ、世界中でいろんな国を見ると、日本のような国はかなりの少数派です。
政府が管理している通貨でも、例えば、トルコのリラやアルゼンチンのペソなど、仕組みは基本的に一緒ですよね。
中央銀行があって、法定通貨が発行されています。
しかし、国の信用度が低いため、アルゼンチンは、まさに今ハイパーインフレのような状態になっている。
アルゼンチン人にとっては、法定通貨こそが価値の裏付けがないものなのです。
だから、日本人と他の国の人々で、「同じ法定通貨であっても感じ方は全く異なる」というのは一つ覚えておくべきことだと思います。
逆に言うと、アルゼンチンの人にとっては「ビットコインとアルゼンチンのペソ、どちらに価値の裏付けがありますか？」という問いに対して、希少性・国際送金ができるとか、技術として拡張しやすいという点を考慮すると、ビットコインの方が価値の裏付けがあると思えるわけです。
これは相対的に政府への信頼が低いからだと思うのですが、日本と他の国の違いは一つ覚えておいた方がいいと思います。
そして、世界的には政府への信頼がない国の方が多いので、ビットコインのような通貨は、彼らにとっては少なくとも価値の裏付けがあり、逆に言うと法定通貨には価値の裏付けがない。そういう話なんです。
じゃあ、日本では政府を信頼している人が多い気がするし、ビットコインはいらないんじゃない？
「円の方が価値の裏付けがあるように感じる」と思う人は多いかもしれないよ。
確かにそういう話もあると思うのですが。
これも面白い話で、別にみんなが「ビットコインが悪い」と思っているわけではなく、「よく分かっていないからそういう意見を持っている」というパターンが多いように感じています。
円についても、政府への信頼という価値の裏付けは、実は案外ふわふわしたものだと思うんですよね。
希少性がある金に価格がついているのも、なぜ価値の裏付けがあるのかという点を突き詰めて考えていくと、結構難しい話だと思っています。
突き詰めると、みんなが言っているのは「価値の裏付けがあるかないか」というよりは「価値の裏付けが見えやすいかどうか」というだけの気がするんですよね。
例えば金だったら、金ののべ棒みたいなものがあるのでイメージしやすい。
円だったら政府などが管理しているから見えやすくて、価値の裏付けはなんとなく感じられる。
それに対してビットコインは、物理的なものに価値の裏付けを置くのではなくて、デジタルなもの、かつ市場の競争原理を利用して価値の裏付けを作っていこうとするものなので。
これは価値の裏付けがないというより、今までの感覚だと価値の裏付けが理解しにくい。そういう表現の方が自分は適している気がしています。
この辺りは多分ビットコインのマイニングの仕組みなどを理解しないとイメージしづらいは思います。
要は、価値の裏付けというのは、思っているより冷静に考えていくと結構ふわふわしたもので、大体みんなは目に見えているものを信じているだけっていうパターンが多くて。
ビットコインはデジタル化しているだけで、価値の裏付けが見にくいからといって価値の裏付けがないというわけではない、ということ。
ビットコインには色々なユースケースがあり、それらが価値の裏付けになっている。価値の裏付けというのは、要は「欲しい人がいるか」ということだと思うんですよね。
もし「円とビットコイン、どちらが欲しいか」という話になったら、どう思う？
今のところ、日本の大部分の人は円を使い慣れてるし、なんとなく信頼できるから欲しい、という人が多い気がするんですけど。
でも、僕はビットコインが欲しいわけですよ。
なぜビットコインが欲しいかというと、円は発行量がどんどん増やされていたり、勝手にコントロールされているような仕組みだからです。
事実円安がかなり進んでいて、これからも円安が進む可能性が高いと自分は認識しています。
インフレなど、法定通貨である円の問題も結構あると思っていて、それに比べてビットコインは希少性がある。
僕みたいに色々な国を行き来する人にとっては、ビットコインは都合がいい。だから欲しいんです。
僕みたいにビットコインを法定通貨に対して欲しいと思う人がいる限り、それが価値の裏付けになると思っています。
ビットコインの価値の裏付けは、法定通貨の健全性とある意味でセットになっています。
法定通貨が健全でなければ、それがビットコインの価値の裏付けになるという見方もあります。
確かに、日本円がたくさん発行され続けているのは、本当に大丈夫なのかな？って思うかも。
「ビットコインを欲しい人がいるかどうか」が価値の裏付けになるっていうのは、なるほどって思うなぁ。
そうですね。何かしらの理由でビットコインを欲しい人が一定数以上いれば、それがある意味で価値の下支え、つまり裏付けになるわけですよね。
なぜビットコインを欲しい人がいるのかと言うと、それが冒頭で話した希少性とか、そういった話に繋がってくるんです。
価値の裏付けがないと批判する人もたくさんいますよね。「ビットコインが使える店舗があまり多くない」という理由で批判する人がいるのも理解できるんですが。
「なぜ欲しい人がいるのか」、そしてそれが裏付けになっている仕組みというのは、法定通貨の問題点を含めて考えるべき問題だとは思いますね。
今後ビットコインの価値がなくなる可能性はあるのか
世界では多くの人がビットコインの価値を認めていて、1枚で数百万円の価格もついているけど…。
今後、ビットコインの価値がなくなる可能性はあるのかな？
「価値がなくなる」というのは、ビットコインに限らず、円やドルなども含めて常にあるリスクだと思います。
特にビットコインはドルに比べて新しいので、まだ何かしらの問題が起きて価格がゼロになり、価値がなくなる可能性、つまり「欲しい人がいなくなる・全く使えなくなる」というリスクはあると思います。
ただ、よく「アメリカ政府がビットコインを潰せば終わりだ」という話を聞きますが、実際にはアメリカではむしろ政府や既存の金融がビットコインを推進するような動きもあります。
政治家のインセンティブや既存金融のインセンティブ（動機）を考えると、ビットコインを潰そうとするインセンティブはどんどん小さくなっています。
むしろ、彼らの利益のためにビットコインを利用したり、サービスを提供したり方向にシフトしている面があります。
世界中の政府が協力すれば、もしかしたらビットコインを潰すことは可能かもしれませんが。
それは政治の話であり、一つの国が何かを推進したら、もう一つの国が禁止するなどのダイナミクスも含めて、そう簡単に政治的な動きでビットコインが潰せるものではないと個人的には思っています。
他にも技術的な要素や他のコインとの競争といった側面もあるのですが、今回は細かい話には触れません。
ビットコインの価値がなくなる可能性は、常にエックスファクター（一つの要因）として想定しておいた方が良いんですけど。
しかし、ビットコインの技術が成熟化し、色々な国での普及が加速している今、完全に無価値になるリスクは少しずつ下がってきていると感じます。
ビットコインは各国で法律や規制が整備されつつあって、以前よりも取引しやすい環境になってきているよ。
現在では資産運用会社などの機関投資家もビットコイン投資を始めていて、ビットコインは一般的な投資商品としての認知度を高めているんだ。
関連記事：ビットコインの終わりの日って何のこと？想定シナリオが実際に起こり得るのかを解説
関連記事：ビットコインの匿名性とは？プライバシーを重んじる理由・透明性との関係を解説
ビットコインの価値は今後どうなる？
ビットコインの価値は、今後も多くの人に認められていくのかな。
価格がどうなるのかも気になるな。
価値と価格は微妙に異なるものですよね。
みんなが気になるのは価格の方ですかね。
ただ、価格の値動きといった短期的な話ではなく、価値というところで言うと…
直接的な回答ではないかもしれませんが、ビットコインが今後社会に普及していくことで起こり得る変化について、個人的にはいくつかのことを考えています。
例えば、国境を越えるのがより簡単になり、国をまたいだ送金もより簡単にできるようになる。
AIや自動翻訳の技術の改善とも関わっていて、グローバリゼーションがさらに進む可能性があるのかなと。
一方で、戦争などの要因があると、逆の方向に進む可能性もあります。
あとは国際化が一つのトレンドなのかなと。
法定通貨がうまく機能していない国が多いので、そういった国の人々にとってはインフレなどから自分の資産を守れる新しいアセットクラスになり得ます。
ビットコインは、法定通貨がうまく機能していない国の人々にとって、重要な金融インフラになる可能性があります。
日本は銀行口座を持っている人口比率が最高レベルだと思いますが、世界には金融サービスにアクセスできず、銀行口座を持っていない人がたくさんいます。
今までベーシックな金融インフラにアクセスできなかった人たちが、ビットコインを使うことで生活が豊かになったりとか、他にも色々な変化が起こるのではないかと思っています。
関連記事：世界でのビットコイン活用方法！実用性のある13の活用事例を紹介
まとめ・ビットコインにはなぜ価値があるのか
普段使っている紙幣と違って、ビットコインには発行上限があるんだね。
政府がたくさん刷ることでインフレしてしまう法定通貨よりも、ビットコインの方が希少性があると考える人がいることが分かったよ。
国際送金にも便利に利用できるし、ビットコインを活用した様々なサービスなども登場しているんだ。
ビットコインが将来世界中で普及すると考える人が増えれば、ビットコインを欲しいと思う人がさらに増えるかもしれないね。
ビットコインって何だか難しそうだし、よく分からないから何となく不安だったけど、他にも色々知りたいなって思ったよ。
ビットコインについて、もっと知っとこ！
執筆者：Shigeru Minami
「知っとこ！ビットコイン図鑑」制作者。
ビットコイングッズのハンドメイド作家として活動中。