ビットコインETFが承認されたけど、日本で買えるわけではないの?
2023年頃から注目を集めていたビットコインETFがついに承認されたものの、現時点ではビットコインETFを日本で買うことはできません。
JCBA(日本暗号資産ビジネス協会)は暗号資産現物ETFについて、法規制も含めた実現可能性の整理に着手しており、各方面での進展が待たれます。
この記事では、ビットコインETFの関連情報や、ビットコイン先物・現物ETFが承認された時の価格チャートを紹介するよ。
ビットコインETFが日本で買える日は来るのか
【新着情報更新】暗号資産などの非特定資産等を投資対象とする投資信託等の組成・販売が適当ではないこと等について追記した「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)について公表しました。(パブコメ募集中)https://t.co/t1vIKOO9jM
— 金融庁 (@fsa_JAPAN) September 30, 2019
2024年1月にSEC(米証券取引委員会)がビットコインETFを承認しましたが、現時点では日本でのビットコインETFの取引はできません。
金融庁は2019年に仮想通貨ETFに対する見解を出しており、ビットコインETFの組成・販売は現状では難しいと言えます。
金融庁・パブリックコメントへの回答より(2019年9月)
暗号資産ETFについては、ETF自体が投資信託等である場合、本監督指針改正を踏まえると、国内で組成・販売することはできなくなるものと考えられます。
出典:コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方|金融庁
また、海外で組成された暗号資産ETFに対して投資する投資信託等を組成・販売する場合についても、一般的には「実質的に非特定資産と同等の性格を有する特定資産」に該当すると考えられます。
太字は筆者による
例えば、今後、暗号資産(仮想通貨)等を投資対象とする金融商品が組成されることも予想されますが、暗号資産への投資については、投機を助長しているとの指摘もあり、当庁としては、このような資産に投資する投資信託等の組成・販売には慎重に対応すべきであると考えています。
出典:「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)の公表について|金融庁
太字は筆者による
「ビットコインETFを新NISAで買えると思っていた」っていう人もいるみたいだけど、現時点では難しいんだね…。
※2024年1月16日執筆時点
また、SBI VCトレードの代表取締役社長・日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)の金融部会長を務める近藤智彦氏は、以下の見解を示しています。
JCBA金融部会では既に、国内での暗号資産現物ETFに関して法規制も含めた実現可能性の整理に着手している。
ビットコインETFという大きな存在に対処するために、さまざまなプレイヤーが存在するなかで、どのような可能性が考えられるのか。
どのような法令・府令の改正などが必要になるのかの整理を進めているところだ。日本での暗号資産ETFの取り扱いについては、整理すべき事項が多数存在している。
出典:CoinDesk
例えば、今回承認されたような海外で組成されたビットコインETFを持ってこられるのか、国内で暗号資産ETFを組成するのか。
さらに税制の問題もある。ETFは金融商品であり、個人の場合は分離課税となる可能性もある。
一方、現物の暗号資産取引は総合課税であり、当然、整合性を求める声も出てくるだろう。
太字・改行は筆者による
現行法が見直されて、ビットコインETFが日本で買える日が来るといいね。
ビットコインETFとは?
ビットコインETFとは、ビットコインの価格に連動するように設計されたETF(上場投資信託)のことです。
ビットコインを直接投資・保管することなく、ビットコイン市場に投資できる金融商品です。
仮想通貨取引所で売買するビットコインに対し、ビットコインETFは証券取引所で売買を行います。
ビットコイン現物ETFの取り組みは2013年から行われているよ。
ウィンクルボス兄弟がビットコイン現物ETFをSECに申請して2017年に否決され、その後も数々のビットコインETFの申請が拒否されてきたんだ。
以前は取引量が少なくて、価格操作も懸念されていたからなかなか認められなかったみたいだよ…。
市場規模が大きくなったり、管理体制も整備されたりして、ついにビットコインETFが承認されたんだね。
ビットコインETFの11銘柄【一覧】
ビットコインETF、11銘柄が承認されたと聞いたけど…
承認された11銘柄について簡単に紹介するよ。
ビットコインETFティッカーの「BRRR」「HODL」とは?
ティッカー | 運用会社 |
---|---|
FBTC | フィデリティ(Fidelity) |
GBTC | グレイスケール(Grayscale) |
BTCO | インベスコ・ギャラクシー(Invesco&Galaxy) |
BTCW | ウィズダムツリー(WisdomTree) |
BITB | ビットワイズ(Bitwise) |
IBIT | ブラックロック(BlackRock) |
ARKB | アークインベスト・21シェアーズ(21Shars&Ark) |
EZBC | フランクリン(Franklin) |
BRRR | ヴァルキリー(Valkyrie) |
DEFI | ハッシュデックス(Hashdex) |
HODL | ヴァンエック(VanEck) |
「BTC」や、運用会社の名前を入れているティッカーが多いんだね。
ヴァルキリーの「BRRR」や、ヴァンエックの「HODL」って何だろう?
どちらもビットコインコミュニティで使われているミーム(ネット上のジョーク)なんだ。
BRRRはお金を大量に印刷する音、HODLはビットコインを持ち続ける(Hold/保有)することだよ。
関連記事:HODLの意味は?ビットコインをガチホするのが難しい理由も解説
ブラックロックなど8社がコインベースでカストディを実施
ビットコインETFのカストディ(ビットコインを保管する)サービスは、ブラックロックなど8社が米大手取引所のCoinbase(コインベース)を選んでいます。
それ以外の3社については、ヴァンエックが取引所Gemini(ジェミナイ)、ハッシュデックスがBitGo(ビットゴー)を選択し、フィデリティはセルフカストディを実施します。
※カストディ…「保管」を意味する言葉で、ETF運用会社の代理人として仮想通貨を保管することを指す
※セルフカストディ…自分自身で資産の管理・保管を行うこと
多くの運用会社がコインベースを選んでいるけど、何か問題点はあるのかな?
コインベースは確かに実績があるけれど、「1つのカストディサービスにビットコインが集中するのは、大規模ハッキングのリスクを考えると懸念事項だ」という意見もあるよ。
ビットコインETFが価格に与えた影響【チャート】
ビットコインETFが承認されたとき、ビットコインの価格にも影響があったと聞いたけど…
2017年のCME先物上場や、2021年のビットコイン先物ETF・2024年のビットコイン現物ETF承認の際は、それぞれ価格にも影響があったと考えられているよ。
CMEのビットコイン先物上場時の価格チャート
CMEとはシカゴ・マーカンタイル取引所(世界最大級の金融派生商品市場)の略称で、先物取引は「将来の特定の日に、事前に決められた価格で資産を売買する契約を行う」ことです。
2017年にビットコインのCME先物が上場された時期には、ビットコインの価格は急騰し、その後大きく下落しました。
「ビットコインが伝統的な金融市場に受け入れられるかも」という期待からビットコインを買う人が増えた一方で、市場があまりにも過熱しすぎた側面もあるよ。
この年は1月の年初来安値が約9万円で、12月には200万円を突破していたんだ。
CME先物上場が価格の天井になって、安い時期に買っていた投資家が売り始めたのかもしれないね。
事実売り(噂で買って事実で売る)っていう投資格言を思い出したよ…。
ビットコイン先物ETF承認時の価格チャート
ビットコイン先物ETFは証券取引所で取引される投資信託で、「将来の特定の日に、事前に決められた価格でビットコインを売買する契約」を指しています。
2021年にビットコイン先物ETFが承認された約半月後、ビットコインは過去最高値を記録し、その後価格が下落しました。
2021年にはコインベースのナスダック上場やエルサルバドルのビットコイン法定通貨化など、様々な好材料があってビットコインの価格も上昇していたんだ。
ビットコイン先物ETFの承認前後は、仮想通貨の市場が全体的に盛り上がっていたんだね。
ビットコイン現物ETF承認時の価格チャート
2023年は年間を通してビットコイン現物ETFへの期待が高まっており、仮想通貨界隈ではETF承認を今か今かと待ちわびる声が見られました。
ビットコイン現物ETF承認イベント中の出来事
- 2023年10月:コインテレグラフの「ETF承認」という誤報でビットコイン急騰
→「ETFが承認されたら急激に上がるかも」という認識が広がり、上昇相場のトレンドが生まれた可能性 - 2024年1月10日(日本時間):米SECのX(Twitter)アカウントが乗っ取られ、「ビットコインETF承認」と投稿
→急騰して下落 - 2024年1月11日(日本時間):現物ETF承認、発表直後は無風。翌日ETF取引が開始し、一時価格が急落
SECのTwitterアカウント乗っ取り!?何だかすごいことが起きていたんだね…。
ビットコイン価格はETFイベントだけではなくて、様々な要因で変動するよ。
2024年には半減期を迎えるし、今後のビットコイン価格がどうなるか注視したいところだね。
関連記事:ビットコインの価格推移!10年以上の歴史をグラフ付きで解説
ビットコインETFが承認されたらどうなる?メリット・デメリットを解説
ビットコインETFはついに承認されたけど、承認されたら今までと何が変わるんだろう?
ビットコインETFが与える影響として、いくつかのメリットやデメリットを紹介するよ。
ビットコインETFのメリット
ビットコインETFは一般的な証券取引口座で売買できるため、伝統的な証券市場に慣れている多くの投資家がビットコイン市場に参加できるようになります。
市場規模が大きく、より多くの資金流入が見込まれるため、ビットコインの価格にも影響を与える可能性があります。
ETFは厳しい規制のもとで取引されているからこそ、市場に参加している投資家が多いんだ。
「ビットコインETFをポートフォリオに組み込みたい」と考える機関投資家もいるかもしれないね。
ビットコインを保管するのが大変と感じる人にとっても、ビットコインETFは投資対象にしやすいかもしれないよ。
既存の規制・税金のシステムが適用されるのも大きそうだね。
ビットコインETFのデメリット
ビットコインETFによって投資家が市場に参加しやすくなる一方で、ビットコイン投資へのリスクを十分に理解しないまま参入し、高いボラティリティ(値動きの幅)のリスクにさらされる投資家が増える可能性があります。
また、運用会社の多くがカストディサービスにコインベースを選択しており、多くのビットコインが1つのカストディに集中している現状を問題視する声もあります。
その他、金と金ETFの価格乖離(価格差)が生じる可能性があるように、ビットコインETFも価格に乖離が起こる可能性はあるね。
ビットコインETFを扱う運用会社は、顧客拡大のために手数料競争や宣伝をしているみたいだよ。
ビットコインの良いところだけでなく、リスクもしっかり周知されているといいね。
関連記事:ビットコインの危険性は?ビットコイン自体のリスク・やめたほうがいい投資方法を解説
【知っておこう】ビットコイン現物ETFの商品特性
ビットコイン現物ETFは、先物ETF以上にビットコインの価格変動からの影響を大きく受けて、急激に価格が変化する可能性があります。
一般的に「現物市場が成熟してから先物市場が発展する」と言われる中、ビットコインでは先物のETFが先に承認された理由として、主に以下の要素が挙げられます。
ビットコイン先物ETFが現物ETFより先に承認された理由として考えられる点
- 現物の流通に懸念材料がある
→FTXの事件に見られるように、取引所・交換所など取引のハブに近いプレーヤーの違法行為が散見される。また、取引量が十分に多いとは言えない - 現物の保有が必要ない
→先物は差金決済であり、ファンドは現物のビットコインを保有する必要がなく、セキュリティ面を含めた現物資産の管理の問題を避けられる
※差金決済…取引の際に対象資産購入に必要なお金の全額を用意せずに、決済時に勝ちと負けの差額の授受のみを行う決済の形態 - 流動性枯渇の懸念が小さい
→先物取引は現物を用意する必要がないので、流動性が枯渇する懸念が現物に比べて小さい - 償還に関する懸念が小さい
→大暴落などの不測の事態が起きた時、差金決済で取引所経由で取引を行う先物の方が、より確実に償還需要に応えやすい
※償還…ETFを運用会社に返還し、対応する資産(ビットコイン)を受け取る流れのこと
先物ETFが先に承認されて、約2年後に現物ETFが承認されたけど…。
「ビットコインのセキュリティ面や流動性がバッチリ管理できるようになった!」っていうような、大きな変化が起きた訳ではないんだよね。
「ビットコイン現物ETFが承認されたから、次は他の仮想通貨の現物ETFだ!」っていう声もあるよね。
だけど、専門家の間でも様々な意見があって、見通しは不明確なんだ。
まずは現物と先物の特性の差を踏まえた上で、ビットコインの現物ETFの動向をしっかりと見守るのが良いかもしれないよ。
分散性への影響を懸念する声もある
ビットコインの分散性やプライバシーを重んじるコミュニティの中には、ビットコインETFに懸念を示す声も一部で見られます。
ビットコインETFによる懸念
- 実際のビットコイン保有を促進しない
→ビットコインETFは価格の動きを追跡するだけであり、実際のビットコインを自分のウォレットで保有するわけではない - 中央集権化への懸念
→ETFは伝統的な金融システムの一部であり、ETFの市場が拡大することはビットコインの分散化と矛盾すると考える人もいる - 本来の目的と異なる
→ビットコインは非中央集権で自由な金融システムの構築を目指しており、ETFがビットコインの本来の目的からずれたものだと考える人もいる
ビットコインETFの承認で「価格が上がるかも!」っていうことに気を取られていたけど、中央集権化を懸念する声にもなるほどって思ったよ。
ビットコインETFの承認によって、ビットコインが広く知られるようになるのは確かだよね。
ETFがきっかけになって、ビットコインに興味を持つ人が増えるかもしれないよ。
関連記事:ビットコインはなぜ価値がある?有識者にインタビュー【価値がなくなる可能性は?】
関連記事:ビットコインは中央集権化が進んでいるのか?データやETF情報を元に解説
ビットコインETFに関するQ&A
ビットコインETFについて、他にも色々知っておきたいな。
一問一答形式で、ビットコインETFについて解説するよ。
ビットコインETFの税金は仮想通貨と異なる?
ビットコインは仮想通貨、ビットコインETFは投資信託であり、税金の扱いも異なります。
- 仮想通貨:総合課税が適用。課税される所得金額に応じて所得税率5~45%、住民税10%
- 投資信託:分離課税の対象。所得税は一律15.315%、住民税5%
仮想通貨は税制の改善を望む声が多く上がっているんだ。
今後の法整備に期待したいなぁ。
ビットコインETFはいつ承認された?
ビットコイン現物ETFは2024年1月10日(日本時間)に承認されました。
ビットコインの現物に連動する上場投資信託(ETF)11本が承認され、翌日から取引が開始しています。
長らくETF承認が期待されていて、2024年の年明けになってついに承認されたんだ。
これまでビットコインに関心のなかった人も、ETF承認が興味を持つきっかけになるかもしれないね!
ビットコインETFはどこで買える?
現状、ビットコインETFは日本では買えません。
ビットコイン現物ETFを承認したのはアメリカのSECであり、日本で承認されたわけではありません。
なお、ビットコインETFが将来的に日本で買えるようになった場合は、証券会社で取引を行う形になります。
証券会社って、例えばSBI証券や楽天証券のことだよね。
SBIや楽天はビットコインを買える取引所も運営しているし、ETFの取り扱いがどうなるのかも注目していきたいな。
ビットコインETFに関する日本の法整備が、これからどうなっていくのかを見守っていこう。
【まとめ】ビットコインETFが日本で買える日は来るのか
ビットコインETF・ポイントまとめ
- ビットコインETFがアメリカで承認されたが、日本では取引できない
- ビットコインETFによって、多くの投資家がビットコイン市場に参加しやすくなる
- ビットコインETFに対し、ビットコインの分散性への影響を懸念する声もある
ビットコインETFがまだ日本で買えないのは残念だけど、法規制が見直されて、いつか日本で買えるようになるといいな。
ビットコインETF承認を機に、ビットコインに関心を持つ人が増えるといいね。
ビットコインって何だか難しそうだけど、他にも色々知っておきたいなって思ったよ。
ビットコインについて、もっと知っとこ!
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執筆者:Shigeru Minami
「知っとこ!ビットコイン図鑑」制作者。
ビットコイングッズのハンドメイド作家として活動中。