ビットコイン好きの人の中には、匿名性を大事にしている人が多くいるって聞いたことがあるけど、どうしてだろう?
匿名性とは本人が不利益を受けないように本人の身元を隠すことを指しており、ビットコインをやり取りした記録は個人に直接結びつかない仕組みになっています。
ビットコインが好きな人々の中には、自分や他者のプライバシーに気を配りながら行動している人も多くいます。
この記事では、ビットコインの匿名性が重んじられる理由を分かりやすく解説するよ。
本記事のざっくりまとめ
- ビットコインの匿名性が重んじられるのは、安全面におけるリスク回避や、ビットコインの性質を大事にするビットコイナーが多くいるから
- ビットコインは透明性と匿名性をあわせ持った、従来の金融システムには無い新しい仕組み
- 既存の金融システムによるアクセス制限・プライバシー侵害を受けて、代替手段としてビットコインの特性に注目する人がいる
ビットコイン好きの人が匿名性を重んじる理由
ビットコイン関連のイベントに行こうとしたら、写真の撮り方に気を付けるように言われたよ。
ビットコイン系のイベントだと、SNSにアップされている写真は手元だけだったり、個人が特定されないように加工されていたりするよね。
高円寺で行われたライトニングフリマについて
雰囲気を見ようとタグ検索するもビットコイナーのプライバシー意識が高いせいかほぼ手元の写真しか出てこない。笑#高円寺ライトニングフリマ https://t.co/dSy91ouTWB
— shinpei (@shinpecolife) November 19, 2023
ビットコイン好きの人々が写真の撮り方を気を付けているのは、安全性の確保・匿名性の維持などの理由が挙げられます。
ビットコイン保有者だとSNS等で拡散されてしまうと、自身や家族が身体的な危害を受けるリスクや、詐欺・ハッキングのターゲットになるリスクが上がってしまうのです。
なお、ビットコインに限らず、個人が特定できるような写真の無断撮影・投稿などの行為はマナー違反ととられる可能性があります。
一度アップされた画像はサーバーに残る上に、不特定多数の人に拡散・保存されてしまい、たとえ削除したとしても完全に消すのは難しい(デジタル・タトゥーになる)ため、個人の写真の扱いには気を付けるのが望ましいです。
確かに、ビットコインを自分で管理している人にとって、強盗に入られたり脅迫されたりするリスクは極力減らしたいはずだよね…。
そうだね。それから、ビットコインの特徴である「匿名性」を大切にしているビットコイナーが多くいる、というのもあるよ。
ビットコインの匿名性?それって何だろう。
ビットコインの匿名性を知る前に、まずは「ビットコインの透明性」について知っておくと理解が深まるかもしれないよ。
【前提】ビットコインの透明性:すべてが公開されている
ビットコインの大きな特性として「透明性」があり、ネット環境さえあれば全てのトランザクション(取引)を誰でも閲覧できます。
取引の正確さや資金の流れが可視化されており、政府・銀行・決済企業などの中央管理者を挟まずに取引が可能です。
全てが公開されているため改ざんが難しく、従来の金融システムで起こり得る「中央管理者による何らかの不正行為」も発生しません。
ビットコインをやり取りする様子って、めっちゃ見えるんだね!
これだけ透明性がある仕組みで、もし匿名性がなかったらどうなると思う?
そっか!もしこの状態で匿名性がなかったら…住所も名前も全部筒抜けになっちゃうよ!
ビットコインは透明性と匿名性をあわせ持つ、従来の金融システムには無かった新しい仕組みなんだよ。
ビットコインの特性を重んじる人にとって、ビットコインの透明性・匿名性はどちらも大事な性質なんじゃないかな。
ビットコインの匿名性とは
ビットコインの匿名性について、もう少し詳しく知りたいな。
ビットコインの匿名性は利用者のプライバシーを守る以外にも、中央機関による制限を受けるサービスへの代替手段としても有効なんだ。
プライバシーの保護
ビットコインを使った取引では、利用者の実名や住所などの個人情報は直接取引に結び付けられません。
取引はビットコインアドレスに紐づけられており、このアドレスは利用者の身元には直接つながらないため、プライバシーを保護しながらビットコインをやり取りできます。
ビットコイン取引で公開される主な内容
- 送信者と受信者のビットコインアドレス
- 送金量
- タイムスタンプ(取引がブロックチェーンに追加された日時)
- 取引手数料
- 取引ID
ビットコインアドレスはとても簡単に作成できて、使い捨ての形で利用できるんだ。
新しいアドレスを各取引ごとに使えば、プライバシーをより効果的に保護できるんだね!
なお、ビットコインの匿名性は「疑似匿名性」と呼ばれることがあります。
理論上、高度な分析を行えば特定の取引バターンやアドレスからユーザーが割り出されることはあるものの、日常的な使用においてユーザーの身元が露呈することはほとんどありません。
運営元から制限を受けるサービスの代替手段
ビットコインは政府・銀行・決済企業などの中央機関に依存しないデジタル通貨であり、金融サービスへのアクセス制限を強いられる人々にとって貴重な代替手段になり得ます。
中央管理者による制限の例
- ナイジェリア政府の取り締まりで銀行口座が凍結される
(2023年にChainalysisが行った「日常的に仮想通貨が使われる国の調査」では、ナイジェリアは世界2位にランクインしている) - 金融・決済サービス運営元によるアカウント凍結
(利用規約違反が疑われる場合など、突然資金にアクセスできなくなるケースがある) - 行政の事務的ミスの影響で銀行口座凍結・全残高差し押さえ・カード利用不可に陥る
(下記引用ツイート参照)
あのおおおおおお
— Jonathan Underwood (@junderwood4649) February 5, 2024
ビットコインのことを知った切っ掛けがですねw
行政の事務的ミスにより私が脱○者と間違われ、
銀行口座凍結+全残高差し押さえ+カードも使えない
↓… https://t.co/0kMpOmWDvf
匿名性の高いビットコインは、中央機関からの制限を受けた経験のある人にとって、すごく大事な通貨なのかもしれないね。
インターネットが登場して、人々ができることは増えたし、自由が広がったんだけど…
インターネットは国家が自由を阻害するツールとしても使われているんだよね。
制限をかける側の人がどんどん制限をかけるかもって考えると、中央管理者のいないビットコインの存在価値は大きいのかもって感じるよ。
関連記事:ビットコインはなぜ価値がある?有識者にインタビュー【価値がなくなる可能性は?】
多様なユースケースに対応できる
ビットコインは単なるお金ではなく、お金のプラットフォームとして誕生しました。
より多くのユースケースに対応できるよう、デフォルトで匿名性が高いようにデザインされています。
ものやサービスの代金を支払う手段にとどまらず、様々な金融活動やアプリケーションに利用できる基盤が提供されています。
匿名性の高い通貨は、匿名性のある使い方・匿名性のない使い方の両方ができるよね。
だけど、匿名性のない通貨は、匿名性のある使い方はできないんだよ。
そっか!ビットコインは自分の個人情報を公開しない取引もできるし、オンラインショップでの買い物では身元を明かすっていう使い方もできるから、色々な使い道に活用できそうだよ。
データ流出のリスク低下
既存の金融システムでは利用者の個人情報が収集・保存されており、データ流出や不正アクセスのリスクが発生します。
しかし、ビットコインの取引では個人情報が直接取引に結び付かないため、データ流出リスクを下げられます。
企業による情報流出の事例
- NTTビジネスソリューションズ(約3万件の個人情報が流出/2024年)
…派遣されていた社員が個人情報を不正に持ち出し、名簿業者に売却 - 東京ヴェルディ株式会社(約2700名のクレジットカード情報が流出/2024年)
…システム管理者用アカウントが不正利用され、決済フォームが改ざんされていた - Coinbase(約6000名のアカウントが攻撃を受ける/2021年)
…ユーザーアカウントが不正アクセスを受け、仮想通貨を不正に出金された - PayPay株式会社…(最大2000万件の情報が流出した可能性/2020年)
…セキュリティ設定ミスにより外部アクセスを受け、PayPay加盟店260万店舗の住所・売上振込先・営業対応履歴などの情報が流出 - LINE株式会社(4000件以上の不正ログイン/2020年)
…4000件以上のアカウントが乗っ取られ、なりすまし行為によるフィッシング行為が発生
企業や自治体の情報流出事件はたくさん起きていて、2023年の1年だけでも100件以上※発生しているんだ。
※被害が1000件以上の事件を抽出
企業が情報流出を起こすのは、管理者アカウントへの攻撃・職員メールなどへのフィッシング攻撃・内部者の情報持ち出しなど、様々な原因があるんだね。
ちなみに、日本の仮想通貨取引所では「トラベルルール」という規則の関係上、ビットコインを送金する際に受取人の名前や住所などの情報が求められるよ。
えっ!ビットコインの特性とは矛盾するような規制があるんだね。
ビットコインを自分のウォレットで管理すればトラベルルールの影響を受けないんだけど…
取引所はビットコインを扱っているとはいえ、中央集権的なサービスだということをしっかり認識しておこう。
関連記事:トラベルルールのデメリットとは?仮想通貨の送金への影響や回避策・ビットコインの性質との矛盾点を分かりやすく解説
既存の金融システムと匿名性に関する問題点
ビットコインの匿名性が重んじられる理由の1つとして、既存の金融システムが個人情報の収集・追跡などを行い、利用者のプライバシーを侵害している点が挙げられます。
- 広範な個人情報の収集
→住所・電話番号・職業・収入などの情報を収集 - ターゲティング広告
→クレカ決済などの購入履歴に基づいた広告を表示する - 第三者への情報共有
→データを収集した企業が提携企業・広告主とユーザー情報を共有し、ユーザーが意図しない形で個人情報が広がる - 情報流出リスク
→金融機関や企業が保管する大量の個人データはサイバー攻撃の対象になりやすい(個人データは高く売買される) - 取引の監視
→不正やマネーロンダリング防止の名目で金融取引が監視される可能性
確かに、金融サービスの口座を開設する時って、色々な個人情報を伝える必要があるよね…
既存金融のプライバシーの扱いに問題を感じる人にとって、ビットコインの匿名性の高さは注目に値するんじゃないかな。
プライバシーを気にしない側の人は、「プライバシーを守りたい」という人の考え方に対して無頓着になっているのかもって思っちゃったな。
色々な理由をつけて他者のプライバシーを侵害しようとする人や企業も存在するけど…
「自分の個人情報を守りたい」と考える人のことも尊重してほしいよね。
ビットコインの匿名性に関する一問一答
ビットコインの匿名性について、他にも色々知っておきたいな。
一問一答形式で、ビットコインの匿名性に関する疑問に答えるよ。
ビットコインは匿名性が高いから犯罪に使いやすい?
「匿名性」という言葉で誤解を受けることがありますが、ビットコインは匿名性だけでなく透明性が極めて高いため、犯罪利用には向かないと考えられています。
ビットコインが犯罪に利用される事例は確かにあるものの、それはビットコイン取引のごく一部に過ぎません。
多くの人は投資・送金など、正当な用途で利用しています。
透明性が高いと犯罪利用に向かない理由
- 取引記録が永久に公開され、何かのきっかけで個人や組織が特定される可能性がある
(例:犯罪に使われたビットコインを取引所で換金しようとする) - 資金の流れを追跡する技術が将来的に進む可能性がある
- 仮想通貨取引所と規制当局の情報共有により、不正な資金の流れの追跡が行われる
犯罪に使われているのは圧倒的に法定通貨なんだけど…ビットコインへの規制を強化したい人や組織が、ビットコインの匿名性の高さを批判するような主張をすることがあるんだ。
規制をしたい側の人が、印象操作のために「ビットコインはマネロンに使われる!」って言っている可能性もあるんだね…。
関連記事:ビットコインは詐欺なのか?詐欺事件の手口・仮想通貨が詐欺と言われる原因を解説
ビットコインは匿名で購入できる?
日本などの多くの国では、仮想通貨取引所を利用する際に身元確認(KYC)が必要であり、ビットコインを匿名で購入するのは難しいと言えます。
なお、個人間でのピアツーピア(P2P)取引では一定の匿名性を保持できるので、信頼できる相手との間でP2P取引を検討するのも選択肢の1つです。
ただしP2P取引による詐欺の事例もあるため、ビットコインや投資に慣れていない方は仮想通貨取引所を使用するのが無難です。
小規模な取引ならビットコインATMを利用するのも有りなんだけど、利用できるATMは限られているし、場所によっては身元確認が求められることもあるんだ。
匿名で買おうとすると詐欺のリスクが上がるし、ビットコインATMだと割高っていうのも覚えておいた方が良さそうだよ。
ビットコイン支払いは匿名でできる?
ビットコインのライトニングネットワークを使った支払いは、名前や住所などの個人情報なしで手軽に利用できます。
店頭でライトニング決済を行う際は、ウォレットアドレスのQRコードを読み込むだけで、数秒で支払いが完了します。
取引所からオンチェーンでビットコイン決済をする場合、自分や相手の様々な情報を登録する必要があるんだ。
だけど、ライトニング決済なら第三者に個人情報を提示せずに支払いできるよ。
日本でもライトニング決済ができるお店があったり、ライトニング決済のイベントが行われたりしているんだね!
3/2 13時から開催の自由が丘ライトニングマルシェのポスターが出来ました!
— Koji Higashi (@Coin_and_Peace) February 14, 2024
前回に引き続きオリジナルグッズや、ハンドメイドのものだけでなく、日用品をライトニング決済で販売したり、他にも前回の高円寺よりさらにパワーアップしてます。
イベント詳細はこちらから↓https://t.co/1ApsYmDtN8 pic.twitter.com/N0Q9LJkfwF
関連記事:ライトニングマルシェとは?ビットコイン好きな人々の草の根活動を紹介
【まとめ】ビットコインの匿名性
ビットコインの匿名性・ポイントまとめ
- ビットコインの匿名性が重んじられるのは、安全面におけるリスク回避や、ビットコインの性質を大事にするビットコイナーが多くいるから
- ビットコインは透明性と匿名性をあわせ持った、従来の金融システムには無い新しい仕組み
- 既存の金融システムによるアクセス制限・プライバシー侵害を受けて、代替手段としてビットコインの特性に注目する人がいる
ビットコインは取引が全て公開されているから、もし匿名性がなかったら住所も名前も全部筒抜けになっちゃうよね。
個人情報が知られたら犯罪に遭うリスクも上がるだろうし、匿名性が大切にされるのも納得だよ。
銀行や決済企業などは様々な個人情報を収集しているけど…ターゲティング広告に利用されたり、第三者に情報共有されたりもするし、情報流出リスクだってあるんだよ。
運営元なしで利用できるビットコインネットワークに、魅力を感じる人は世界中に多くいるんじゃないかな。
ビットコインって何だか難しそうだし、よく分からないから何となく不安だったけど、他にも色々知りたいなって思ったよ。
ビットコインについて、もっと知っとこ!
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執筆者:Shigeru Minami
「知っとこ!ビットコイン図鑑」制作者。
ビットコイングッズのハンドメイド作家として活動中。