「ビットコインの終わりの日」っていう不穏な言葉を見たんだけど、一体何のことだろう…?
ビットコインは価格の上げ下げが話題に取り上げられやすく、時には不安を煽るような言葉が用いられることがあります。
特に暴落時には様々な批判記事が並び、「終わりの日」という言葉が使われることもあるようです。
この記事では、「ビットコインの終わりの日」に関する技術的な話や、想定されているシナリオ・実際に起こり得るかどうかを解説するよ。
本記事のざっくりまとめ
- 「ビットコインの終わりの日」で連想されるのは、①新しいビットコインの生成が終わりを迎える日、②ビットコインが何らかの理由で終わりを迎える日、の2パターン
- ビットコインが発行上限に達した後も、マイナーはマイニング報酬のうち「取引手数料」を引き続き得られる
- ビットコインの崩壊シナリオが複数ささやかれているが、現実的には非常に困難であったり、すでに対策が進んでいたりする
ビットコインの終わりの日って何のこと?
「ビットコインの終わりの日」って、一体何のことなんだろう?
ネットでビットコインについてググっていたら、「終わりの日」っていう言葉が出てきて、すごく心配になったんだけど…。
「終わりの日」で連想できることは2パターンあるよ。
1つはビットコインの仕組み上の話で、新しいビットコインの生成が終わりを迎える日。
もう1つは、ビットコインが何らかの理由で終わりの日を迎えるという、いくつかの想定シナリオじゃないかな。
何だか難しそうだし、不穏だし、ビットコインって大丈夫なのかな…?
正直、「終わりの日」って不安を煽るような言葉だと思うし、ネット検索がそういうインパクトのある言葉を表示させる仕組みは嫌だなって思うけど…
まずは1つ1つ、ビットコインの情報を知っておこうか。
「終わりの日」説①すべての半減期が終わった後のこと?
ビットコインの仕組みに関連する、「ビットコインの終わりの日」って何だろう?
少し専門的な話になるけど、できるだけ分かりやすく解説するね。
ビットコインは「マイニング」で新しく生成される
ビットコインには2100万枚の発行上限が設けられており、上限を迎える日まで新しいビットコインが毎日生成されます。
ビットコインを生成する作業は「マイニング(採掘)」、マイニングをする人は「マイナー」と呼ばれており、マイナーがマイニングをすることでビットコインのネットワークの安全性が保たれています。
関連記事:ビットコインのマイニングとは?現在の報酬や終了時期・やり方や仕組みを紹介
マイニングをざっくり言うと、ビットコインのネットワーク上で行われるトランザクション(取引)を確認して、ブロックチェーンに正しく書き込むことだよ。
マイニングに成功したマイナーは、報酬としてビットコインがもらえる仕組みなんだ。
ふむふむ。ちなみに、ビットコインは今どれくらい発行されているの?
すでに1900万枚以上が発行されているよ。
現在も、おおよそ10分に1度のペースで発行が続いているんだ。
え!発行上限が2100万枚なのに、もうほとんどが発行されているんだね。
じゃあ、もうすぐ新しいビットコインの発行は終わっちゃうのかな?
ビットコインは半減期ごとに発行ペースが減る
ビットコインには、新規発行のペースが減少する「半減期」が設けられています。
ビットコインの半減期が訪れると、マイニングで新たに生成されるビットコインが半分になる仕組みです。
半減期は21万ブロックが作成されるたびに自動的に発生し、おおよそ4年ごとに半減期を迎えています。
関連記事:【過去チャート一覧】ビットコインの半減期とは?2024年のいつ頃?仕組みをわかりやすく解説
最初のころは1ブロックのマイニングで50BTCが新規発行されていて、時が経つにつれて減っているんだね。
2024年の半減期を迎えたら、新規発行されるビットコインは3.125BTCずつになるってことかぁ。
ちなみに、ビットコインは全部で33回の半減期を迎える仕組みになっていて、最後のビットコイン半減期は2140年頃だと予想されているよ。
長い時間をかけて、残りのビットコインが少しずつ生成されるんだ。
あれ?でも半減期が全部終わって、ビットコインの新規発行がゼロになっちゃたら、マイナーはマイニングをする理由がなくなるんじゃないの?
ビットコインを報酬でもらえるからこそ、マイナーはマイニングをしていたんだろうし…
マイナーがいなくなったら、ビットコインネットワークの安全性が保たれなくなっちゃうんじゃない?
それはよくある誤解なんだ。次はマイニング報酬について詳しく見ていこうか。
ビットコインが発行上限に達したらどうなるのか
ビットコインが2100万枚の発行上限に達すると、マイニング報酬のうちの「ブロック報酬」はゼロになります。
しかし、マイニング報酬のうちの「取引手数料」は引き続きマイナーに支払われるため、マイナーがマイニングに参加し続ける動機付けになると考えられています。
マイニング報酬
- ブロック報酬
→新しいブロックの追加に成功したマイナーに与えられる。新規発行され、約4年ごとに報酬は減っていく - 取引手数料
→ビットコインを送金する人が支払う手数料。1つのブロックに含まれるすべての取引手数料が、マイニングに成功したマイナーに支払われる
マイニング報酬・取引手数料の推移
マイニング報酬がゼロになったらブロック報酬はなくなるけど、手数料報酬がもらえるから、マイニングは続くんだね!
ビットコインの価格が上がって、取引も活発に行われるようになれば、手数料報酬はさらに増えていくかもしれないね。
「終わりの日」説②ビットコイン自体が何かの理由で終わりを迎える?
ビットコイン自体が何かの理由で終わっちゃう、ってことが有り得るのかな…?
色々と誤解されがちなんだけど、1つずつ解説していくね。
ビットコインネットワークが止まるシナリオ
ビットコインってインターネット上のお金だし、システムがダウンして使えなくなっちゃうとか、そういうことは起こらないの?
ビットコインは世界中に分散しているノード(コンピューター)が運営しており、1つのノードがダウンしてもネットワークが止まることはありません。
2009年にビットコインのブロックが初めて作られてから、ずっとビットコインのブロックチェーンは動き続けています。
「銀行やスマホ会社のサーバーがダウンして一時停止中」っていう事件がたまにあるから、ビットコインも止まるのかなって思ってたけど…
ビットコインは今までとは違った仕組みが使われているんだね。
ビットコインは初期の頃から無数の攻撃を受けているけど、全て失敗に終わっているし、深刻な欠陥はすでに発見・改修済みなんだ。
これまでにアップデートもされていて、さらなるセキュリティ強化や機能の改善が行われているよ。
関連記事:【漫画】ビットコインの仕組みを図解で分かりやすく解説【初心者向け】
ビットコインの価値が無くなるシナリオ
仮想通貨の中には、ほぼ無価値になるくらい大暴落したコインもあると聞いたけど、ビットコインは大丈夫かな?
まず、仮想通貨っていうのは何万種類、何十万種類もあって、問題のあるコインも大量に発行されているんだけど…
アルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)という言葉があるように、ビットコインは仮想通貨の中でも別格扱いだというのは知っておいてね。
その前提で解説するよ。
ビットコインは世界で最も知られており、最も取引量の多い仮想通貨です。
初期の頃は規制面での不確実性が危惧されていましたが、近年では規制環境も整備されつつあります。
希少性や分散性など、ビットコイン特有の性質に価値を見出している人が世界中におり、ビットコインが無価値になるシナリオは想定しづらいと言えます。
ビットコインは価格の値動きが激しいし、暴落することもあるけど、長期的に見ると価格が上昇すると考えている人が多くいるんだね。
ハイパーインフレが進む国の人にとっては、ビットコインは資産を守るための選択肢になり得るし、国際送金をする人にとっては手数料の安いビットコインを選ぶ理由があるんだよね。
「ビットコインを欲しい」と思う人がいる限り、ビットコインの価値がなくなることはないんじゃないかな。
ビットコインの価格推移
関連記事:ビットコインの価格推移!10年以上の歴史をグラフ付きで解説
ビットコインが国から禁止されるシナリオ
大きな国がビットコインを禁止したら、ビットコインが徐々に使えなくなったりしないかな…?
Youtubeチャンネル「ビットコイナー反省会」の東晃慈氏は、ビットコインが国家から止められる可能性について、動画内で以下のように話しているよ。
ビットコインを止めるっていうことは、国家からしたら昔は比較的簡単にできたと思うんですけど。
時間が経つにつれて、ビットコインの規模が大きくなってきたりとか、保有者も拡大して、政府が完全に止めるというか、つぶすっていうのは非常に難しくなってきている、というのが今の状況だと思っています。(一部抜粋)
保有の禁止・法律で取引を制限した場合
2017年に中国がいきなり中国国内の取引所を停止させたことがある。
1933年にアメリカがゴールドの保有を禁止した事例もあり、似たようなことがビットコインでも起こるという主張は理解はできる。
ビットコインは取引所から引き出しさえしてしまえば自己保管できるので、没収するのは難しいのではないか。
(一部抜粋)
1つの大国がビットコインを禁止した場合、別の大国は逆に動くかもしれないっていう話もなるほどなって思ったよ。
中国は仮想通貨に厳しい規制をしているけど、アメリカは活発な開発が進められているみたいだし、企業のビットコイン保有も広がっているよね。
それと、2024年1月にはアメリカでビットコイン現物ETFが承認され、伝統的な金融市場で扱われるコモディティ(商品/原油や金と同じカテゴリー)として扱われていることも知っておくといいよ。
関連記事:ビットコインはなぜ価値がある?有識者にインタビュー【価値がなくなる可能性は?】
他のコインに置き換えられるシナリオ
ビットコインは一番最初に生まれた仮想通貨だし、ビットコインを真似したコインもたくさんあるんだよね?
新しい技術を付け加えた仮想通貨が一気に伸びて、ビットコインが取って代わられる可能性もあるんじゃない?
ビットコインは後続のコインとは比較できないほどの市場シェアがあり、世界では国際送金・資産保全など実用的な使われ方もされています。
特定の機能・用途に特化したコインは今後も増えていく可能性があるものの、ビットコインの分散性・希少性の高さを模倣するのは非常に困難です。
ビットコインが採用している「PoW」という仕組みは、他のコインの多くが採用する「PoS」と性質が大きく異なるよ。
運営元なしで完全に動き続けているビットコインの分散性は、後続のコインが真似するのは難しいんだ。
他の仮想通貨は創設者やコインの運営企業が活発に活動していることが多いんだね。
ビットコインは創設者のサトシ・ナカモトが姿を消しているのに、ネットワークが世界に分散されていて動き続けているのは唯一無二って感じがするかも。
関連記事:ビットコインとアルトコインの違いは?有識者にインタビュー【どっちが人気?】
関連記事:サトシ・ナカモトは日本人じゃない?ビットコイン創設者の謎やポケモンとの関連性を独自考察
新しい技術によりセキュリティが揺らぐシナリオ
いろいろな技術が進歩したら、ビットコインのセキュリティが突破されたりしないかな…?
ビットコインの脅威として「量子コンピュータ(桁違いの処理能力を持つコンピュータ)」を挙げる意見がありますが、量子コンピュータによる攻撃に耐性を持つ暗号技術「耐量子計算機暗号」の研究も進んでいます。
将来的には量子コンピュータへの耐性を高めるために、ビットコインの暗号技術の一部を置き換える施策が採られる可能性があります。
参考リンク
- Bitcoin Scriptを使ったランポート署名の検証と量子耐性
ビットコイン開発者のメーリングリストにて「Bitcoinに量子耐性をもたせる方法」が投稿されており、ビットコイン開発者も量子コンピュータに関する研究を進めているのがわかる
ブログ執筆:安土茂亨氏(chaintope社CTO/ビットコインのブロックチェーンを中心とした研究開発を行う - 量子コンピュータは本当にビットコイン(BTC)の脅威になるのか?
インタビュー:原利英氏(AndGo社CEO/仮想通貨・秘密鍵管理のプロダクト開発企業)
そもそも、実際に量子コンピュータが実用化された場合は、ビットコインだけでなく現代社会全体に大きな影響が出るよね。
銀行や金融機関も本気になって量子コンピュータ対策を進めるだろうし、守る側の技術も発展するんじゃないかな。
そっか、何となく量子コンピュータって怖そうだなって思ったけど…
手をこまねいているだけじゃなくて、ビットコインもさらにセキュリティを高めればいいんだね。
【まとめ】ビットコインの正しい知識を知るのが大切!
「ビットコインの終わりの日」・ポイントまとめ
- 「ビットコインの終わりの日」で連想されるのは、①新しいビットコインの生成が終わりを迎える日、②ビットコインが何らかの理由で終わりを迎える日、の2パターン
- ビットコインが発行上限に達した後も、マイナーはマイニング報酬のうち「取引手数料」を引き続き得られる
- ビットコインの崩壊シナリオが複数ささやかれているが、現実的には非常に困難であったり、すでに対策が進んでいたりする
「ビットコインの終わりの日」って聞いて、ちょっと心配になったけど…1つずつ説明を聞いてみたら、過度に心配しすぎなくても大丈夫かなって思ったよ。
ビットコインについて詳しく調べてみたり、最新ニュースをチェックしたりするのが大切なんだね。
念のため。ビットコインは投資商品ではあるし、売買するタイミングによっては損をすることもあるよ。
ただ、ビットコインは技術の成熟化・様々な国での普及も進んでいるし、完全に無価値になるリスクは少しずつ下がっているんじゃないかな。
ビットコインって何だか難しそうだし、よく分からないから何となく不安だったけど、他にも色々知りたいなって思ったよ。
ビットコインについて、もっと知っとこ!
関連記事:【イラスト解説】ビットコインって何?仕組みや何に使えるのかを初心者向けにわかりやすく解説
関連記事:ビットコイン事件簿まとめ!死亡者が出た日本の事例を紹介
執筆者:Shigeru Minami
「知っとこ!ビットコイン図鑑」制作者。
ビットコイングッズのハンドメイド作家として活動中。