アジャイルエナジーXのビットコインマイニングって何だろう?
アジャイルエナジーXは再生可能エネルギーとビットコインを組み合わせた、新しい取り組みを行うスタートアップ企業です。
東京電力の100%子会社が手掛ける事業として、国内外から関心が寄せられています。
この記事では、アジャイルエナジーXの概要やビットコインマイニングの仕組みを分かりやすく解説するよ。
本記事のざっくりまとめ
- アジャイルエナジーXは再生可能エネルギーを活用した仕組みを使って、日本の電力問題の解決を目指している
- 再エネ電力でビットコインマイニングを行い、農業など複数の技術と組み合わせて持続可能な仕組みを構築している
- 「ビットコインマイニングは環境に悪い」と誤解されることがあるが、余っている再エネ電力を活用しているため、環境破壊にはあたらない
アジャイルエナジーXとは
アジャイルエナジーXとは、再生可能エネルギーの導入を最大化することと、電力系統の最適化を目指している企業です。
※電力系統…発電設備や送電設備など、電力の生産から消費までを行う設備全体を指す
再生可能エネルギーを大量に導入するには、「出力制御」「系統混雑」という2つの課題がある
- 出力制御
…電気の需要と供給のバランスをとるために、発電する量を制御すること
例:暖房や冷房の利用が少ない春や秋には発電を止める - 系統混雑
…電力系統の電気を送れる容量を超えてしまい、発電した電気のすべてを消費者に届けることができない状態
そっか、太陽光発電とか水力発電の再エネは、電力が余ってしまうことがあるんだね。
でも、どうやってこの問題を解決するんだろう?
「電力が余っているなら、電力の需要を作ればいい」というような考え方のもと、電力の使い道が模索されたんだ。
そこで取り入れられたのが、ビットコインのマイニングだよ。
ビットコインとは
え?ビットコインって何だろう?
聞いたことがあるけど、どこかの会社のコイン?
どうして電気の話にビットコインが出てくるんだろう。
ビットコインというのは、運営元がいない、新しいお金のかたちだよ。
運営元がいない…?
例えば、日本のお金は日本銀行が運営していて、PayPayとかの決済サービスは決済会社が運営しているけど、ビットコインにはそういう大元のえらい人とか、管理する企業が存在しないってこと?
そうだよ。
ビットコインは世界中に散らばる1万以上のノード(コンピューター)が、みんなで分散しながら管理しているんだ。
え?そんなのうまくいくの?
大元がいないってことは、管理に参加してもお給料がもらえるわけじゃないよね?
みんなボランティア精神だけでビットコインを管理しているの?
ビットコインの分散管理に参加する人がたくさんいるのは、「マイニング」という仕組みが機能しているからなんだ。
ビットコインのマイニングとは
マイニングをざっくり言うと、ビットコインのネットワーク上で行われる取引を確認して、ブロックチェーンに正しく書き込むことだよ。
ブロックチェーン?
ブロックチェーンは、取引の履歴を暗号技術を使って時系列で記録して、1本の鎖のようにつなげる技術だよ。
ブロックチェーンの特徴は改ざんが難しいとか色々あるけど話すと長くなるから、気になる人は以下の記事を読んでみてね。
関連記事:【漫画】ビットコインの仕組みを図解で分かりやすく解説【初心者向け】
えっと、じゃあマイニングはビットコインの取引データを確認する作業…?
そうだよ。
取引データをまとめた新しいブロックを最初に承認した人は、報酬としてビットコインがもらえる仕組みが成り立っているんだ。
最初に承認した人?
何をしたら承認という作業ができるのかな。
簡単に言うと、計算作業をただひたすら繰り返すんだ(ハッシュ値の計算)。
試行錯誤を何千万回と繰り返す必要があって、そのためにはコンピューターを動かす電力が必要なんだよ。
あ!じゃあ、再エネ発電で余っている電力を使って、ビットコインのマイニングをするってことだね!
マイニングやハッシュ計算についてもう少し深く知りたい方は、「ビットコインのマイニングとは?現在の報酬や終了時期・やり方や仕組みを紹介」の記事をご覧ください。
ビットコインマイニングは環境に悪い?
うーん、でも「ビットコイン マイニング」でググってみたら、「環境に悪い」っていう情報も出てくるけど、本当に大丈夫?
確かに、以前はビットコインマイニングは環境に悪いイメージでとらえられることが多かったんだ。
でも、今は再生可能エネルギーの利用が進んでいて、世界的にも再エネを使ったマイニングが進んでいるんだよ。
2023年には、マイニング電力の半分は再生可能エネルギーが占めるようになったんだね!
それから、「マイニングが環境に悪い」っていうのは、ちょっと誤解している人もいるんだよ。
例えば、化石燃料を燃やして発電した電力を使うのは、環境への影響があるかもしれない。
だけど、再生可能エネルギーを使うマイニングは余っている電力を使っているわけで、新しく燃料を使用しているわけではないんだよ。
あ!確かにそうかもしれないね。
「余った電力はマイニングに使う」という仕組みが確立されれば、余剰電力のコントロールが難しい再生可能エネルギーの開発に取り組みやすくなるだろうし、再生可能エネルギーの利用が広がる可能性だってあるんだ。
再生可能エネルギーの発電が増えて、化石燃料を使った発電が減っていけば、CO2排出量も減るかもしれないね。
もしかすると、環境に悪いどころか、環境にいい取り組みなのかもしれないよ!
マイニングは様々な国で行われている
- アメリカ
→テキサス州でフレアガス(油田から発生する余剰ガス)を活用したマイニングを実施 - ブータン
→ヒマラヤ山脈の豊富な水力発電資源を活用 - ケニア
→マイニングと小型の水力発電所の組み合わせによって、安定した電力のない村に電力を持続的に供給する取り組みが行われている(地域の生態系を大きく阻害しない形で行われている)
その他、ビットコインへの批判に応える記事をいくつかご用意しておりますので、ご興味のある方はあわせてご覧ください。
関連記事:「ビットコインは電気代の無駄」説は時代遅れ!マイニングが環境・電力問題を解決する可能性を解説
関連記事:「ビットコインはやめたほうがいい」論に物申す!よくある批判を初心者向けにわかりやすく解説
関連記事:ビットコインは詐欺なのか?詐欺事件の手口・仮想通貨が詐欺と言われる原因を解説
アジャイルエナジーXの取り組み
じゃあ、アジャイルエナジーXの取り組みについて知りたいな。
他の国のマイニング事業とは違う、一風変わった仕組みだって聞いたけど…。
アジャイルエナジーXは複数の技術を組み合わせて、環境に優しく持続可能な仕組みを構築しているよ。
- マイニング装置を動かすと出てくる熱(廃熱)を回収
- 廃熱でビニールハウスを温める
- 廃熱をCO2回収装置のエネルギーに使う→CO2を植物の光合成に活用
- 実証実験中:アクアポニックス(魚と植物を同じシステムで育てる循環型農業)
- CO2の適用可能性:溶融塩電解を活用して微小のダイヤモンドを生成
再生可能エネルギーでマイニングをするだけじゃなくて、マイニング装置の熱を有効活用しているんだね!
陸上養殖と水耕栽培を組み合わせたアクアポニックスとか、余った電気を使っていろいろなことができるのはすごいなぁ。
ちなみに、ビットコインのマイニングに詳しい人の中には、「電力会社がマイニングをするのが最も効率がいい」と考えている人もいるんだ。
東京電力の100%子会社が取り組む事業として、国内外のビットコイン関連企業から関心が寄せられているよ。
あれ?でもそれなら、他の国の電力会社はマイニングをしていないのかな?
電力会社が大々的にマイニングを行っている事例はまだあまり見られないよ。
今はビットコインマイニングを専業にしている海外のベンチャー企業が強い状況なんだ。
正直ビットコインってちょっと怪しそうだし、大規模な企業は警戒しているところもあるかもしれないね。
後は、ビットコインっていう新しい分野の規制・法律に対応するのは大変なことなんだよ。
アジャイルエナジーXは色々と模索しながら事業を進めているみたいだね。
アジャイルエナジーの実証実験
2024年5月の動画では、実証実験で稼げているのは1日に1,000~1500円、1か月換算で4万円くらいと話されていたよ。
あれ?思ったよりも少ないんだね。
ビットコインって何となく儲かるとか損をするとか、そういうイメージがあったから、もっと稼げる仕組みなのかと思っちゃった。
確かにビットコインは価格変動が大きいから、ビットコインに投資をして儲けたり損したりする人はいるよね。
だけど、アジャイルエナジーXはビットコインで大儲けするとか、そういうことを目指している訳じゃないんだよ。
上記の動画でも、アジャイルエナジーXの取り組みはビットコインでボロ儲けするビジネスモデルではなくて、余剰再エネの有効活用・系統混雑緩和という電力全体の問題を解決するためのあくまでも1手段としてビットコインを使う、という風に言及されているよ。
動画内では、ビットコインの価格が下がった時には、マイニングマシンが安く買えるようになって、系統混雑緩和につながるっていうお話がされているね!
ビットコインの価格が上がっても下がっても大丈夫なビジネスモデル、ぜひ実現してほしいな!
アジャイルエナジーXの将来の展望
- 日本には電力供給量の最大2倍の再エネポテンシャルがある(環境庁試算)
- 全国の再エネ抑制電力をマイニングでマネタイズした場合、2050年には1年で約3,600億円※のマイニング収益になる可能性がある
※データは2022年公開の動画より引用
今から30年後くらいには、マイニング収益が年間で数千億円の規模になっているかもしれないんだね!
ビットコインマイニング×再エネ発電の取り組みが色々な自治体に受け入れられていくといいなぁ。
アジャイルエナジーXが取り組んでいる仕組みは、装置の設置・運用の自由度が高いんだ。
電気と空気と水、それに通信回線さえあれば、日本全国どこでも実装できるんだよ。
自分たちの町で使う電気は自分たちで発電する、「電力の地産地消」が進むかもしれないね!
【まとめ】アジャイルエナジーXは日本の電力問題を解決する可能性がある!
アジャイルエナジー・ポイントまとめ
- アジャイルエナジーXは再生可能エネルギーを活用した仕組みを使って、日本の電力問題の解決を目指している
- 再エネ電力でビットコインマイニングを行い、農業など複数の技術と組み合わせて持続可能な仕組みを構築している
- 「ビットコインマイニングは環境に悪い」と誤解されることがあるが、余っている再エネ電力を活用しているため、環境破壊にはあたらない
アジャイルエナジーXは余っている再エネ電力を有効活用するために、ビットコインマイニングの仕組みを導入しているんだね。
様々な自治体での導入が進めば、再生可能エネルギーの開発にも良い影響があるかもしれないね。
日本の電力問題の解決を目指す、アジャイルエナジーXの取り組みに注目だよ。
ビットコインマイニングって聞いて、よく分からないから何となく不安だったけど、何だかビットコインにも興味がわいてきたよ。
ビットコインについて、もっと知っとこ!
執筆者:Shigeru Minami
「知っとこ!ビットコイン図鑑」制作者。
ビットコイングッズのハンドメイド作家として活動中。
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